前回、武富士事件の概要まで見ていきましたが、贈与税がかかるかのポイントはもらう人の住所でした。
では『住所』とは何なのでしょうか?
相続税基本通達1の3・1の4共-5に次のように定められています。
「各人の生活の本拠をいうのであるが、その生活の本拠であるかどうかは、客観的事実によって判定するものとする。この場合において、同一人について同時に法施行地に2箇所以上の住所はないものとする。」
住民票や持ち家がある場所ではなく、客観的事実、例えば実際の住居がどこか、住んでいる期間はどれぐらいか、配偶者等の家族がどこに住んでいるか、仕事をどこでしているか、資産がどこにあるか、といった事実から判定します。
ただし、この規定であれば贈与の年に海外にメインで住んでればいいことになり、節税目的の移住を規制することができません。
そこで武富士事件を受けて、過去の実績を元に贈与税の納税義務を判断するよう改正されました。なお下記の例では贈与する財産は国外財産とします。
<平成12年度改正>
受贈者:国籍…日本、住所…外国
過 去:受贈者、贈与者が5年以内に日本に住所を有していたことがある。
→贈与税の納税義務あり
つまりあげる人、もらう人双方が5年超海外に住んでいないと、贈与税からは逃れられないことになりました。
<平成25年度改正>
受贈者:国籍…問わず、住所…外国
過 去:受贈者、贈与者が5年以内に日本に住所を有していたことがある。
→贈与税の納税義務あり
平成12年改正では日本国籍の人のみの課税でしたが、国籍要件がなくなりました。
<平成29年度改正>
受贈者:国籍…問わず、住所…外国
過 去:受贈者、贈与者が10年以内に日本に住所を有していたことがある。
→贈与税の納税義務あり
海外の居住必要期間が5年超から10年超へ延長されました。
さらに受贈者が海外で生まれて、日本国籍なし、日本に住んだことなしの場合でも、贈与者の住所が10年以内に日本にあれば贈与税の課税対象となりました。
節税と改正はいたちごっこのところがあり、年々要件が厳しくなってきています。
あげる人、もらう人の双方が10年超海外に住んでないといけないので、節税目的の移住はかなりハードルが高くなっています。