贈与税の納税義務者 ② 武富士事件

posted by 2018.11.21

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 前回、贈与税がかかるかどうかはもらった人の住所で判断するという点を解説しました。
もう少し正確にケース別に分けると次のようになります。
なおこの分け方は原則的考え方で、現行法では租税回避を防ぐために要件は厳しく複雑になっています。

 

① 全部日本

・贈与者:親(日本)
・受贈者:子(日本)
・財 産:日本にある株式

⇒日本の贈与税かかる

 

② 全部海外

・贈与者:親(香港)
・受贈者:子(香港)
・財 産:オランダにある株式

⇒日本の贈与税非課税(香港は贈与税自体がなし)

 

③ 財産が海外

・贈与者:親(日本)
・受贈者:子(日本)
・財 産:オランダにある株式

⇒日本の贈与税かかる(もらう人が日本にいれば世界中の財産が対象

 

④ もらう人が海外で財産は日本

・贈与者:親(日本)
・受贈者:子(香港)
・財 産:日本にある株式

⇒日本の贈与税かかる(もらう人が海外にいても日本の財産には贈与税)

 

⑤ もらう人と財産が海外

・贈与者:親(日本)
・受贈者:子(香港)
・財 産:オランダにある株式

⇒日本の贈与税非課税(もらう人が海外にいれば日本の財産にのみ贈与税)

 

のパターンで争われたのが『武富士事件』です。
簡単に言うと次のような流れとなります。

日本の上場株式をオランダの資産管理会社に持たせる
  ↓
子どもが香港に移住(1年の2/3が香港)
  ↓
オランダの株式を親から子へ贈与

 

 争点は節税目的で香港に移住したのに、香港が住所と言えるかどうかという点です。
結論としては1年の2/3を香港で過ごしたこと、生活の実態があったこと、現地で仕事があったこと等から住所が香港にあるという判断となり、贈与税は非課税となりました。
この判決で贈与税1300億円が取り消され、さらに利息として還付加算金400億円が納税者に支払われたことも話題となりました。

 

 このようなケースに対応するため、相続税が何度か改正されていますが、その変遷については次回見ていきます。