空き家と税金のケーススタディ

posted by 2018.09.4

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 空き家と税金との関係について、相続税、所得税、固定資産税の別に取り扱いを見てきました。
ただ税目別に見ると「結局何が一番いいのか」が分かりにくいところがあります。
そこで実際の事例に当てはめて税負担を検証します。

 

1.最も税金が少ない流れ(配偶者)

① 自宅(20年前に建築)を所有していた父が死亡

② 同居していた配偶者が相続してしばらく居住

③ 配偶者は独立している子どもと同居することに

④ 亡くなった年に売却

<解説>

② 配偶者が相続してしばらく居住

≪相続税≫(小規模宅地等の評価減)

 配偶者が自宅を相続した場合は、申告期限までの居住や所有を要件とすることなく相続評価額が80%減額(最大330㎡)されます。

≪所得税≫(居住用財産の3000万円控除)

 配偶者は居住している住宅を売却しているため、譲渡益から3000万円を控除できます。
また税率に関しても10年以上居住していたことから20.315%→14.21%に軽減されます。

 

④ 亡くなった年に売却

≪所得税≫(相続税額の取得費加算)

 相続により取得した資産を相続から3年10ケ月以内に売却した場合にはかかった相続税の一部を取得費として控除できます。

≪固定資産税≫(住宅用地の特例)

 固定資産税は1/1時点の情報を元に課税されるため、亡くなった年中であれば居住用のままですし、年もまたいでいなければ翌年分の固定資産税がかかることもありません。

 

2.最も税金が少ない流れ(別居親族)

① 自宅(40年前に建築)を所有して一人暮らししていた父が死亡

② 遠方の賃貸住宅に住む子どもが相続

③ 空き家となった自宅を取り壊し

④ 相続から10ケ月経過かつ相続から3年後の年末までに売却

 

<解説>

② 遠方の賃貸住宅に住む子どもが相続(家なき子の小規模宅地等の特例)

 相続前3年以内に持ち家に住んだことのない別居親族が自宅を相続して申告期限まで所有した場合には相続評価額が80%減額されます。

 

③ 空き家となった自宅を取り壊し(空き家の3000万円控除)

 昭和56年5月31日以前建築の自宅で、取り壊すか、耐震工事を行なうことが特例の条件になっています。

 

④ 相続から10ケ月経過かつ相続から3年後の年末までに売却(空き家の3000万円控除)

 空き家の3000万円控除は相続から3年経過する日の年末(最長で4年弱)までに売却することが要件です。
 ただし②の家なき子の特例を受けるには相続税の申告期限までは売らずに所有しておく必要があります。
なお空き家の3000万円控除は相続税の取得費加算との併用ができませんので相続から3年10ケ月以内の売却は気にする必要がありません。
 

 

3.最も税金が高い流れ

① 自宅(20年前に建築)を所有していた父が死亡

② 持ち家に住む子どもが相続

③ 空き家のまま放置したため、特定空き家に指定

④ 相続から4年経過後に売却

 

<解説>

① 自宅(20年前に建築)を所有していた父が死亡

 昭和56年5月31日以前建築でないため、空き家の3000万円控除の適用がありません。

 

② 持ち家に住む子どもが相続

 配偶者、同居親族、家なき子のいずれでもないため、小規模宅地等の特例により相続評価を80%減額することができません

 

③ 空き家のまま放置したため、特定空き家に指定

 特定空き家に該当すると固定資産税が1/6になる住宅用地の特例が使えません

 

④ 相続から4年経過後に売却

 相続税額の取得費加算は相続から3年10ケ月以内の売却が要件なので満たしていません。

 

 最後の例は少し極端ですが、高くなる要件を満たすことのないよう気にしながら空き家の取り扱いをご検討下さい。