厚生労働省によると2014年度に未払残業代の支給を受けた従業員は20万人を超え、過去最多だったようです。
100万円以上を支払った企業は約1300社あり、金額は142億円に上ります。
この未払残業代の税務上の取扱いはどうなるのでしょうか。
<従業員側>
いろいろな考え方がありますが、大きくは解決方法によって2つに分かれます。
① 後払い給料
過去の労働時間に応じて給料の後払いとして受け取った場合にはそれぞれの年の給料になるため、さかのぼって年末調整をやり直すことになります。
それに伴い住民税も変動しますし、4~6月の給料に変動があった場合には毎月の社会保険料も変わります。
② 一時金
未払残業代を交渉や裁判等の結果、一時金として受け取った場合には受け取った年の賞与という扱いになります。
①に比べるとさかのぼらない分、手続きは簡単ですがまとまった金額を受け取った場合、翌年の住民税が跳ね上がるので注意が必要です。
一時金については損害賠償金であれば損害の回復で非課税という考え方もありますが、過去の判例においてはあくまでベースが労働の対価であり担税力があるため、給与所得とされているケースが多いです。
①後払い給料 と ②一時金 でどちらが得か(手取りが増えるか)は金額に寄ります。
金額が多ければ年度を分けられる①後払い給料 の方が手取りが多くなり、金額が少なければ税金への影響が小さいのでさかのぼらない ②一時金 の方が手間が少なくて済みます。
<企業側>
・過去にさかのぼらず、払った事業年度の経費になります。
・①②いずれの場合も源泉徴収は必要で、未払残業代を支払った月の翌月10日まで納める必要があります。
①は年末調整やり直し後の不足額、②は賞与の源泉徴収税額を納めることになります。
ブラック企業やメンタルヘルスなど労働に関する世間の関心も高いことから今後も未払残業代に関するチェックは厳しくなっていきそうです。