自宅に限らず不動産を売った方に時々言われるのが
「買った値段より安いから税金なんて出ないでしょ」
確かに譲渡所得税は利益が出ていて初めてかかる税金なのでマイナスなら税金もかからないし、申告すらいりません。
ただ「買った値段より売った値段が安いから税金がかからない」とは限りません。
まず譲渡所得は次の式で計算します。
『譲渡収入-取得費-譲渡経費』
譲渡経費というのは仲介手数料、登記費用、測量費、印紙代、取壊費用など譲渡のために直接要したものを言います。
取得費とは原則的には購入費用(諸経費含む)です。
土地の場合は買った値段そのままなので売値と単純比較しますが、建物はそう単純ではありません。
建物は使用に応じた減価償却費分価値が落ちると考えるので取得費は購入費用から目減りしていくことになります。
建物の耐用年数は税務上構造や用途によって決まっており、住宅で木造なら22年、鉄骨鉄筋コンクリート造なら47年です。
この耐用年数は事業に使っている場合のもので自宅など非事業用は1.5倍の長さになります。
非事業用は商売ほど頻繁に使うわけではないので価値の減少が緩やかと考えます。
自宅の場合の耐用年数は木造なら22年×1.5倍=33年、鉄骨鉄筋コンクリート造なら47年×1.5=70年(1年未満切捨て)となります。
例:木造住宅を3000万円で購入、20年後に2000万円で売却
① 譲渡収入 2000万円
② 減価償却費 3000万円×0.9×0.031※×20年=1674万円
③ 取得費 3000万円-1674万円=1326万円
④ 譲渡経費 74万円
⑤ 譲渡所得 ①-③-④=1600万円
⑥ 譲渡税 ⑤×20.315%=3,250,400円
※0.031:木造住宅・非事業用33年の旧定額法償却率
このような計算になり買った値段より1000万円も安いのに325万円の税金が発生しています。
譲渡所得は金額も大きいので思い込みで判断せず、税理士や税務署に相談して申告もれのないようにしましょう。