前回の続きで土地と建物の按分について見ていきます。
方法が複数あるため、按分額に”幅”が出てきますが、どう分けるのが有利なのでしょうか。
<売り手>
・消費税をなるべく払いたくないので建物を少なくしたい
・2年後に消費税の納税義務が発生してしまうので建物を少なくしたい(1000万円超で免税なくなる)
・2年後に簡易課税が使えなくなるので建物を少なくしたい(5000万円超で簡易不可に)
<買い手>
・消費税を多く控除できるので建物を多くしたい
・減価償却費を多く計上できるので建物を多くしたい(土地は償却できない)
売り手と買い手ではニーズが異なるため、あえて内訳を書かずにお互い好きに(合理性のある方法で)按分するケースもあります。
一方、土地と建物の内訳をはっきり契約書に書いておけばわざわざ計算しなくていいですし、第3者との合意で決まった割合なので説得力もあります。
ただし割合に不自然さがあると税務署の指摘を受けます。
① 事例
・建築会社が中古住宅をリフォームして一般消費者に販売
・売買契約書に土地代金、建物代金、消費税額を明記
② 納税者の主張
・過去に販売した実績率(固定資産税評価額等を使った独自計算)で土地と建物を按分
・当事者間で合意しているので当然認められるべき
③ 税務署の主張
・土地代金と建物代金が合理的に区分されていない
・リフォームによる価値の増加を反映した売上原価の比で按分すべき
④ 裁判所の判断(東京地裁・東京高裁)
・消費税を免れるために恣意的に合意することも可能なので、当事者間の合意は消費税法上は絶対ではない
・税務署主張の売上原価比で按分する方法を採用
納税者の主張も分からなくはないし、税務署の計算方法も市場原理を無視したやや乱暴な方法にも映りますが、それでも負けるということは余程極端に分けたとか、恣意的に按分したと思われる証拠があったとかそういった事情があるのかも知れません。
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」ですね。


