黄金株とは

posted by 2025.06.18

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 日本製鉄によるUSスチール買収のニュースの中で登場した”黄金株”
これはどんな株式なのでしょうか?

 日本とアメリカで内容の違いはありますが、ここでは日本の会社法における黄金株について見ていきます。

 

<定義>

 特定の重要な議案について拒否権を行使できる特別な株式のことを言い、「拒否権付き株式」とも呼ばれます。
通常、株主総会は多数決によって意思決定が行われますが、黄金株はたとえ1株しか保有していなくても、会社の合併や事業譲渡、取締役の選任や解任など特定の重要な決議事項に対して拒否権を発動できるという非常に強い権利を持ちます。

 

<メリット>

・企業の自主性の保護

 創業者や特定の経営陣が黄金株を持つことで会社の方向性を維持することができます。USスチールの例で言うとトランプ大統領がこれに当たります。

・敵対的買収への防衛策

 買収者に株を過半数を持たれたとしても、黄金株を持つ株主が拒否権を発動すれば買収者の意図する議案を否決することができ、独立性が保たれます。

・事業承継の円滑化

 先代経営者が黄金株を持つことで、後継者に株を譲って事業を引き継いだ後も重要な局面で経営に関与できるので誤った判断を防ぐことができます。

 

<デメリット>

・拒否権の濫用

 黄金株による拒否権が頻繁に発動されるなど権利が濫用されると重要な意思決定が滞ったり、他の株主の利益を損なう可能性もあります。

・他の株主とのトラブル

 1株で強力な権利を有するため、他の多くの株主の不満につながる恐れがあります。
また先代経営者が黄金株を持つようなケースでは、後継者や従業員にとっては全権を先代が握っている印象が残るため、透明性やガバナンスの面でネガティブなイメージを持たれることもあります。

 

<手続き>

・既存の株を黄金株に変更する場合と新たに黄金株を発行する場合とがありますが、いずれにしても定款変更は必要です。

・定款変更には株主総会の特別決議(議決権の過半数の出席+出席議決権の2/3以上の賛成)が必要です。

登記が必要(外部から黄金株を発行していることは分かります)

 

<相続税への影響>

・強力な権限を持つ黄金株ですが、株式評価については他の株式と同様に評価され、特に上乗せはありません。

・事業承継税制を使う場合は、黄金株を先代が持ったままにはできません(経営権が移転していないと判断されます)

 

 黄金株は強力な権利であるが故にメリットもデメリットも大きくなります。
発行すること自体に十分な検討が必要で、その権利の行使についても慎重な判断が求められます。