代償分割の注意点 ②

posted by 2025.01.24

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 前回解説したように代償分割は他の人に現金等を払うことで相続財産のバランスを調整する方法ですが、贈与税、相続税、所得税の計算において注意すべき点があります。

 

 今回は贈与税について見ていきます。
簡略化のため、相続税の基礎控除や生命保険金の非課税枠については省略します。

 

<事例1>

・相続人 :長男と次男の2人

・相続財産:土地4000万円のみ

・遺産分割:長男が土地を相続

・代償分割:長男が自分の現金から次男へ2000万円を代償分割(2人とも計2000万円)

⇒2000万円は遺産分割の中の精算であるため、贈与税の課税なし

 

<事例2>

・相続人 :長女と次女の2人

・相続財産:土地3000万円、保険金5000万円

・遺産分割:長女が土地を相続、保険は契約により次女が取得

・代償分割:次女が保険の中から1000万円を長女へ代償分割(2人とも計4000万円)

⇒1000万円が次女から長女への贈与扱い(贈与税231万円)

 

 事例2も相続のバランスを取るためにしているのになぜ贈与税がかかるかというと生命保険金が「みなし相続財産」であるためです。

 生命保険金は亡くなった時点で存在するものではなく、亡くなった後で相続人が請求することでもらえるので、本来の相続財産ではなく、遺産分割協議の対象でもありません。
ただし、保険料を払っていたのが亡くなった人で、死亡をきっかけに支払われていることから「相続財産とみなして」相続税が課税されます。

 事例2の次女は保険金を受け取っていますが、相続財産としては何も受け取っていません。
その状況で長女に1000万円を渡しているので、これは相続財産の精算ではなく、単なるお金の贈与ということになってしまいます。

 

 今回は簡略化のため、次女は生命保険金のみを受け取っている事例にしましたが、実際には他の財産を相続することもあると思います。
次女が相続した財産の合計と代償金を比較して、代償金の方が大きければその差額が贈与になります。

 

 ケースとしてはレアですが、遺産分割の調整のために生命保険に加入することもあると思いますので、スルーしないよう気をつけましょう。