セミナー10時間目は「電子帳簿」です。
前回までのインボイスと並んでどこまで対応したらいいのか悩ましい問題です。
1.背景
国を挙げてペーパーレス化が促進されているのは、資源の節約、生産性向上という観点だけでなく、デジタル化を進めることで税務調査を効率的に行いたいという狙いもあります。
そのため、税務調査に耐え得る状態かどうかというのも一つのポイントになります。
2.最低限必要な対応
① 原則
・添付ファイルやWEB上の明細など電子的に受け取ったものは電子のまま残す
・改ざんできない、検索できる、画面表示または印刷ができることが要件
② 例外
・2年前の売上が5000万円以下なら検索機能不要
・印刷して整理しておいて税務調査時に紙で提示できるなら検索機能不要
・人手不足やシステム導入困難など相当な理由があり、税務調査時に紙での提示とダウンロードができるなら電子帳簿不要
③ 結論
・従来通り紙で印刷して領収書綴りなどで保管しておけばOK
・但し、電子データは削除せずに残す必要あり
3.積極的な対応
① 電子のみの取引
・サーバー、クラウド、電子帳簿ソフトなどによりデータで保存
② 紙で受け取った書類
・写真やスキャンで電子化すれば紙は捨ててもOK
・取引後2か月と7日以内に読み込み(訂正削除履歴が残るソフトならタイムスタンプ不要)
・最低でも年月日、金額、取引先で検索できることが要件(調査時にダウンロードできる前提)
③ 自社発行の請求書等
・初めからコンピュータで作成したものはデータのみ保存でOK
・例:総勘定元帳や現金出納帳などの帳簿、決算書や在庫表などの決算書類、請求書や領収書の控え等
④ 優良な電子帳簿
次の要件を満たせば「優良」という扱いになり、青色申告特別控除が55→65万円になり、修正申告時の過少申告加算税が5%値引きされます。
(なお、青色申告特別控除は電子申告のみでも65万円になります)
・訂正、削除、追加の履歴が残る
・帳簿の相互関連性がある(例:仕訳番号が共通している)
・日付、金額、相手方で検索できる(調査時にダウンロードできる前提)
・事前に税務署への届出が必要(個人は3月15日が届出の期限)
次回最終回は法人化について見ていきます。