選挙の結果により、突如争点化した「年収の壁問題」
人手不足に悩む中小企業にとっては、年末にかけての働き控えは売上に影響する問題なだけに壁引き上げへの期待も高まっています。
ところで、そもそも「103万円の壁」とは何なのでしょうか。
一言でいうと所得税と扶養に関する年収の境界線なんですが、話はそう単純ではありません。
<103万円の仕組み>
≪本人の所得税≫
・年収103万円-給与所得控除55万円-基礎控除48万円=0
⇒所得税がかからない(住民税は基礎控除が43万円なので壁は98万円)
≪扶養≫
・年収103万円-給与所得控除55万円=合計所得金額48万円
⇒合計所得金額が48万円以下だと所得税住民税の扶養に入れます。
<経緯>
103万円になったのは1995年なので30年間変わっていないことになります。
一般の方の意識としても定着していますし、企業としても103万円を基準に家族手当を出している会社も多いです。
<150万円の壁>
働き控えの問題は以前から言われていたため、2018年に配偶者に関しては扶養の基準が年収150万円に引き上げられています。
その場合、本人の所得税住民税は若干かかります。
またあくまで配偶者のみの規定なので、それ以外の子ども等は103万円のままです。
<社会保険の壁>
”103万円の壁”はキャッチ-なテーマですが、実際に手取りへの影響が大きいのは社会保険の壁です。
従業員50人以下の企業なら130万円、従業員50人以上の企業なら106万円で本人と企業に社会保険料の負担が発生します。
企業の保険料負担を減らすための助成金があったり、一時的な収入増加では社会保険の扶養から外れない特例があったりしますが、手続きの煩雑さもあり、あまり浸透していません。
社会保険の扶養に関しては、各健保や企業によって取扱いが異なることもややこしいところです。
”壁問題”は手取りという面では社会保険や家族手当も大きく影響してきます。
せっかく争点になっているので、お茶を濁したようなみみっちい修正ではなく、抜本的な改正に向けて議論が進むことを期待したいところです。