役員に対する賞与は利益調整につながることから支給しても経費になりません。
ただし事前に届けておけば経費(損金)になります。
こういった賞与を「事前確定届出給与」と言いますが、納税者が裁判で負けている事例があったので注意点と共にご紹介します。
1.判例
<判決>
・令和6年2月21日 東京地裁:納税者敗訴
・令和6年10月2日 東京高裁:納税者敗訴
<内容>
・届出内容は2800万円×2名、実際の支給額は2500万円×2名
・変更届出書は出ていない
・5000万円で損金算入していたため、更正処分で全額否認
<判決趣旨>
・届出と異なる金額の支給を認めれば、高額で届けて枠取りをすることで利益調整して法人税を回避できてしまう。
・上記のような使い方は制度の趣旨から外れ、課税の公平を害することになる。
・臨時改定事由または業績悪化改定事由に該当し、かつ変更届を出せば変更後の金額で損金算入できる。
・なお、未払計上した場合も要件を満たさない。
事前確定届出給与に関する判例はあまりありません。
というのも要件と手続きがはっきりしているだけに、争う余地があまりないためです。
制度の趣旨と企業のニーズが一致していない微妙な制度ではあるものの、あくまで要件は要件なのでその範囲で実行するしかありません。
次回は改めて事前確定届出給与の注意点について確認します。