非上場株の贈与のタイミング

posted by 2024.09.9

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 前回、上場株式の贈与のタイミングについて取り上げましたが、非上場株式にも贈与に適したタイミングはあるのでしょうか。

 

 非上場株式は事実上売却が難しいにも関わらず株価が高く出てしまうので、事業承継という観点で考えると、できるだけ株価が安いうちに動かしておきたいところです。

 次のようなタイミングで非上場株式の株価は下がることがあります。

 

1.上場株式の株価が下落

 非上場株式の評価は自社の貸借対照表をベースにした「純資産価額」と上場会社の同業平均である「類似業種比準価額」をミックスして評価します。
そのため、株式市場が暴落したような場合には平均が下がるため、釣られて非上場株式の株価も下がります。

 

2.特別損失が発生

 類似業種比準価額を計算する際には過去3年の自社の実績(配当、利益、純資産)を使います。
役員退職金、固定資産売却損、災害損失など特別損失が発生した場合には、赤字になるため、利益及び純資産が低下して株価が下がります。

 

3.設備投資で含み損発生

 土地や建物を購入した場合、実際の購入額より株価を計算する上での評価額の方が低くなることがあります。
土地は「時価>路線価評価額」、建物は「時価>固定資産税評価額」となることが多いため、株価を下げる要因になります。
ただし、購入後3年間は時価評価する必要があるため、効果が出るのは買ってから3年後以降です。

 

4.分社

 利益の出る部門を分社した場合、類似業種比準価額の一要素である利益が減るため、株価が下がります。

 

5.従業員数の増加

 非上場株式の評価は会社規模の影響を受けます。会社規模は年商、総資産、従業員数によって、「大、中の大中小、小」の5段階に分かれます。
規模が大きいほど類似業種比準価額の影響を受けやすく、株価は下がる傾向にあります。
例えば、従業員数が70人以上になった場合には、類似100%で評価するため、株価は下がることが多いです。

 

 上記のような状況は意図的に作り出すこともできますが、相続対策のためだけに会社の価値を下げるのも善し悪しですので、実行する場合は「経営としてどうか」という観点も考慮するようにしましょう。