前回の続きで物納で受け取ってもらえる財産について見ていきます。
1.物納できる財産
第1順位
① 不動産、船舶、国債、地方債、上場株式等
② 不動産および上場株式のうち物納劣後財産
第2順位
③ 非上場株式等
④ 非上場株式のうち物納劣後財産
第3順位
⑤ 動産
優先順位が決まっていて、上位のものがなければ次を選べます。
したがって物納に適した不動産があるのにいきなり動産を選ぶといったことはできません。
なお、文化庁の登録を受けた美術品についてはいろいろ手続きは必要なものの第1順位として取り扱われます。
2.物納の要件
・現金での一括納付や延納が困難
・物納申請財産が国内にある上記1の相続財産
・管理処分不適格財産に該当しない
・申告期限(相続開始から10か月以内)までに添付書類と共に物納申請書を税務署長に提出
3.物納劣後財産(物納は可能だが優先順位が下がる)
・永小作権や地役権等が設定されている土地
・建築確認のない建物およびその敷地
・区画整理事業に係る仮換地
・現に納税義務者の居住または事業の用に供されている建物およびその敷地
・配偶者居住権の目的となっている建物およびその敷地
・劇場、工場、浴場その他の維持または管理に特殊技能を要する建物およびこ
れらの敷地
・道路に2m以上接していない土地
・開発行為をする場合に許可基準に適合しない土地
・市街化区域以外の区域にある土地(宅地造成することができるものを除く)
・農業振興地域整備計画における農用地区域内の土地
・保安林として指定された区域内の土地
・法令の規定により建物を建築できない土地
・過去に生じた事件または事故その他の事情により、正常な取引が行われない恐れがある不動産およびこれに隣接する不動産
・事業を休止している法人の株式
4.管理処分不適格財産(物納不可)
① 不動産
・担保権の設定がある
・権利の帰属について争いがある
・境界が明らかでない
・隣接する不動産の所有者等と訴訟しないと通常の使用ができないと見込まれる
・他の土地に囲まれて公道に通じない土地で通行権の内容が明確でない
・借地権の目的となっている土地で、その借地権者が不明
・他の不動産と一体として利用されている不動産または共有不動産
・耐用年数を経過している建物(通常の使用ができるものを除く)
・敷金返還義務が国に引き継がれる(申請者において清算することを確認できる場合を除く)
・管理または処分を行うための費用がその収納価額と比較して過大となると見込まれる
・公の秩序または善良の風俗を害するおそれのある目的に使用されている
・引渡しに際して通常必要とされる行為がされていない
・土地に関する権利を暴力団員等が有している
② 株式
・譲渡に関して金融商品取引法その他の法令の規定により一定の手続が定められている株式で、その手続がとられていない
・譲渡制限株式
・質権その他の担保権の目的となっている
・権利の帰属について争いがある
・共有に属する株式(共有者全員がその株式について物納の許可を申請する場合を除く)
・暴力団員等が関わる株式
③ 上記以外の財産
・上記①又は②に準ずる性質があると税務署長が認めるもの
ずらずらとダメなものを書きましたが、要するに管理するにも売るにも手間のかからないきれいな財産ということです。
それならわざわざ手間を掛けて物納しなくても売って払えばいいので、結果として物納は少なくなっています。