前回の続きで令和4年分確定申告での改正点である雑所得について見ていきます。
2.副業など雑所得の範囲の明確化
① 背景
いわゆる副業による所得は事業所得か雑所得のどちらかに該当します。
従来は営利性、継続性、設備など実質基準によって判定していましたが、その判定が困難であるため、形式基準が作られました。
② 事業所得と雑所得の違い
・事業所得…赤字が出れば他の所得と損益通算が可能。青色申告の特典(損失繰越、特別控除、専従者給与等)もあり。
・雑所得 …損益通算不可、青色申告の特典なし
③ 形式基準
帳簿の有無と年収によって判定します。
<記帳・帳簿書類の保存あり>
・概ね事業所得
・収入金額が僅少(例年※300万円以下で主たる収入に対する割合が10%未満)なら雑所得
※例年:概ね3年程度の期間
・営利性が認められない(例年赤字で赤字解消のための取組※を実施していない等)
※赤字解消の取組:収入増加や黒字化のための営業活動
<記帳・帳簿書類の保存なし>
・年収300万円超 …概ね業務に係る雑所得(実質基準で事業の可能性もあり)
・年収300万円以下…業務に係る雑所得(事業の可能性なし)
④ 雑所得の範囲の明確化
・公的年金等
・業務に係る雑所得…原稿料、メルカリなどの営利目的で継続的なもの
・その他の雑所得 …暗号資産の売却等
⑤ 帳簿の保存
業務に係る雑所得がある場合は令和4年分から次の書類が必要
・2年前の収入が300万円超 ⇒現金取引の請求書や領収書等の保存
・2年前の収入が1000万円超⇒収支内訳書(白色申告の決算書)を確定申告書に添付
当初は、年収300万円以下の副業は全て雑所得という改正案でしたが、反対意見が多かったため、主に帳簿の有無で判断されることになりました。
また雑所得は他の所得に該当しない”余り物”が集まる場所でしたが、範囲を明確にして帳簿書類の扱いについてもやや厳しくなっています。