令和5年度税制改正大綱 ② インボイス

posted by 2022.12.20

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 税制改正大綱の2回目は適用が来年に迫った消費税のインボイス制度について見ていきます。
導入を目前に控え、混乱も生じていることから税負担の軽減事務負担の軽減措置が導入されます。

 

1.免税事業者の税負担軽減

① 概要

 免税事業者がインボイス発行事業者になった場合の納税額が3年間、売上消費税の2割に軽減されます。

② 内容

・新たにインボイス発行事業者になった、又は課税事業者を選択した場合に適用

・事前届出不要で申告時に選択可能

・売上に係る消費税額の8掛けを控除

・2年目から簡易課税への変更も可能

・税額としては卸売業以外は簡易課税より有利(卸売業は9割控除可能)

③ 適用時期

 令和5年10月1日~令和8年9月30日の属する各課税期間

 

2.小規模事業者の事務負担軽減

① 概要

 小規模事業者の少額取引については6年間、インボイスなしでもOK。

② 内容

基準期間の課税売上高が1億円以下又は特定期間(前期の上半期)の課税売上高が5000万円以下である事業者は税込1万円未満の課税仕入れについてインボイスなしで仕入税額控除が可能

③ 適用時期

 令和5年10月1日~令和11年9月30日の6年間(課税期間無関係)

 

3.返還インボイスの発行免除

① 概要

 振込手数料の負担等は実質値引きに該当するため、別途返還インボイスの交付が必要でしたが、少額であれば交付義務が免除されます。

② 内容

・税込1万円未満の対価の返還等についてはインボイスの発行義務なし

・経理的には「支払手数料」ではなく「売上値引」で処理

③ 適用時期

 令和5年10月1日以降の値引き等

 

4.申請期限の柔軟化

① 概要

 令和5年3月31日までに登録申請しなかった場合でも、15日あればインボイス発行可能になります。

② 内容

・課税期間の初日から登録する場合の期限:初日の1か月前⇒15日前に短縮

・登録をすぐ取り消す場合の期限:提出課税期間末日の30日前の前日⇒翌課税期間初日の15日前に短縮

・令和5年10月1日以後の任意の日から登録する場合の期限:15日以降を選択可能

 

 実務的には「1の3年間の8割減」と「3の値引きインボイスの発行不要」が軽減効果が大きくなっています。
 取引の関係上、課税事業になってインボイス発行せざるを得ない免税事業者も3年間は税抜売上の2%の納付で済みますが、その後は普通に支払わないといけないため、3年の間に値付けの変更や各種合理化などを進めておく必要があります。

 また税制ではありませんが、IT導入補助金や持続化補助金の充実によりインボイス発行事業者を支援することも想定されており、システム変更などの投資がある場合は補助金の活用を検討してみましょう。