賃上げ税制 ③ 賃上げ促進税制

posted by 2022.10.6

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 賃上げ税制最終回は来年から始まる「賃上げ促進税制」です。

 

2.令和4年4月開始

① 賃上げ促進税制(令和4年4月1日~令和6年3月31日開始)

⇒全企業向け・令和5年3月決算~令和6年2月決算

 直前の制度ではコロナ対策で新規雇用者を重視する制度となっていましたが、やはり一人ひとりの賃上げを促すべきという考え方となり、大企業では継続雇用者を重視する制度に戻っています。
中小企業では直前の所得拡大促進税制をベースにしつつ、控除額が拡大されています。

 

<対象企業>

・青色申告

・大企業、中小企業を問わず個人も含む

・中小企業者等の定義は前回の所得拡大促進税制と同じ

 

<要件>

≪大企業≫

・通常:継続雇用者給与等支給額が前年度比3%以上増加

※資本金10億円以上かつ従業員1000人以上の場合、マルチステークホルダー要件も必須(従業員や取引先との適切な付き合い方をHP等で宣言し、経産省にも届出)

・上乗せ①:継続雇用者給与等支給額が前年度比4%以上増加

・上乗せ②:教育訓練費が前年度比20%以上増加

 

≪中小企業者等≫

・通常:雇用者給与等支給額が前年度比1.5%以上増加

・上乗せ①:雇用者給与等支給額が前年度比2.5%以上増加

・上乗せ②:教育訓練費が前年度比10%以上増加

 大企業では継続雇用者のピックアップが再び必要になりましたが、中小企業向けの制度では不要です。

 

<控除額>

≪大企業≫

・通常:雇用者全体の支給増加額 × 15%

・上乗せ①:通常+10%

・上乗せ②:通常+5%

 判定は継続雇用者でしますが、率を掛ける時は全体の増加額を使います。
最大の控除率は30%で10%拡大しています。

 

≪中小企業者等≫

・通常:控除対象給与等支給増加額 × 15%

・上乗せ①:通常+15%

・上乗せ②:通常+10%

 上乗せが直前制度では給与又は教育費という要件でしたが、2つに分かれて別々に上乗せできるので最大の控除率は40%と15%拡大しています。
経営力向上計画の要件はなくなっています。

 1つの制度に統合されたと言いつつ、中身を見ると大企業と中小企業では別モノです。

 なお、前者の制度は大企業向けと書きましたが、大企業しか使えないわけではなく全企業で使えます。
例えば中小企業で『全体の給料』が1.5%増えてないと中小企業者等向けの制度は使えませんが、『継続雇用者の給料』が1.5%増えていれば大企業向けの制度が使えます。
ややこしいですが、中小企業の場合は1つがダメでも諦めずに両方の要件をチェックするようにしましょう。