前回の続きで土壌汚染地の評価に関する裁決事例を見ていきます。
<概要>
① 納税者が浄化費用相当額を控除して申告(土地12.7億円-除去費用6.4億円×80%)
② 税務署が浄化費用を控除できないとして更正処分
③ 国税不服審判所が②の処分を全部取り消し(令和3年12月1日)
<税務署の主張>
・本件土地は土壌汚染対策法による調査及び措置を義務付けられる地域にない。
・現状の立体駐車場や平置き駐車場の敷地としての使用が最有効利用であり、多額の浄化費用をかける必要がない
<納税者の主張>
・国の指定調査機関による調査で有害物質が発見された。
・最有効利用をするためには堀削除去の措置が必要
<不服審判所の判断>
・土壌汚染対策法による除去措置の義務がなくても最有効利用を実現するためには浄化費用の負担が発生する。
・本件土地の容積率は600~800%、周辺には商業施設やオフィスビルが建ち並び、最有効利用は中高層の建築物敷地と言える。
<ポイント>
・指定調査機関の調査による正確な土壌汚染状況の把握
・浄化費用の見積額の算定が合理的
・最有効利用の判定に関する説得力のある疎明資料の準備
最後の「何が最有効利用か」という判断は実務的には難しい部分があり、極端に言えば浄化費用が宅地評価を上回って評価額がゼロ円になるケースもあり得ます。
土壌汚染地の評価にあたってはポイントを抑えた資料の準備が重要になってきます。