前回は公的な制度を使った退職金積み立てでしたが、今回は民間の生命保険を使った退職金積み立てについて見ていきます。
1.養老保険(従業員向け)
<概要>
・福利厚生目的で万一の死亡保障と退職金準備の両方に備える保険
・死亡保険金の受取人は遺族、満期保険金の受取人は会社
・中途退職の場合は解約返戻金で退職金の支払いが可能
・役員、従業員とも加入可能
<経理>
・1/2損金
<注意点>
・福利厚生目的なので普遍的加入が要件
・普遍的加入:原則全員加入、ただし勤続年数や年齢など合理的基準で区分していれば全員でなくてもOK
2.定期保険(役員向け)
<概要>
・解約返戻率の高い生命保険で退職金を準備
・逓増定期保険(保険金額が増加していく)や平準定期保険(保険金額は一定)が一般的
・定期保険は契約期間が満了すると返戻金がゼロになるので中途解約が前提
<経理>
・貯蓄の要素が強ければ資産計上、掛け捨ての要素が強ければ損金算入
・最高解約返戻率で4つに区分(令和元年改正)
① 50%以下:全額損金算入
② 50%超70%以下:前半4割の期間は4割資産計上(後半25%で損金算入)
③ 70%超85%以下:前半4割の期間は6割資産計上(後半25%で損金算入)
④ 85%超 :前半10年は9割資産計上、最高返戻率までは7割資産計上(返戻ピーク後損金算入)
<注意点>
・以前は運用、節税しながら退職金準備をすることが可能でしたが、税制改正及び運用利回りの低下により難しくなっています。
・保険金は一旦会社に入るので退職金額は会社で決められますし、他の用途にも使うことができます。
・役員の場合はより若い人で加入すれば保険料を抑えることができます。例えば創業者の退職金を若い後継者を被保険者にして加入して準備するといったことが可能です。
改正前に契約したものは節税メリットがありましたが、これから加入するものは節税というより資金繰りや決算書への影響緩和をメインに考えることになります。
節税という観点では規模は小さくなりますが前回ご紹介した従業員向けの中退共の方が適しています、