自己株式を取得する上場企業が増えているようです。
2021年度の国内主要企業の業績は過去最高益を更新する見通しで、株主還元策の一環として、積み上がった手元資金で自社株買いを実施する企業が増えています。
なぜ自社株買いが株主還元になるかと言うと、市場に出回る株数が減るため1株当たりの利益が増えて結果として利益配分が増えるためです。
またPER(株価収益率)やROE(自己資本利益率)といった銘柄選びの基準となる数値も良くなるため投資家からの評価も高くなり、株価上昇の要因にもなります。
では非上場企業の場合、自己株式の取得にどのような影響があるのでしょうか。
① 取得時
<法人税>
・株主への資本の払戻しと考えられるため純資産の部のマイナス項目として取得額で表示されます。
・資本金の額は変わらないため、資本金を基準とする各種税制優遇(税率、交際費、少額減価償却資産、特別償却など)には影響ありません。
<所得税>
・株主への払戻しのうち利益剰余金を原資とする部分は配当とみなされて源泉徴収されます。
・みなし配当以外の部分は株式の譲渡所得として計算します。
・譲渡所得部分は分離課税なので税率は20.42%で一定ですが、みなし配当部分は総合課税なので配当額が大きければ累進税率により税負担は大きくなります。
・多額のみなし配当を回避する方法としては持株会社を作る、相続後の買い取り特例(申告期限後3年以内)を使うといった方法があります。
② 取得後
<住民税均等割>
・住民税均等割は原則として「資本金等の額」を基準に計算します。資本金等の額は資本金だけでなく株主から拠出された金額全般が含まれます。
・自己株式については以前は「資本金等の額」のマイナス項目として均等割の減少要因となっていましたが、平成27年の改正により影響はなくなっています。
・均等割を減らすには自己株式になっているものを消却して減資する必要があります。ただし公告や登記で手間がかかるのと資本金の減少自体が信用に関わることなので減資する例は少ないです。
自己株式の取得は会社への影響はあまりありませんが、個人はみなし配当の影響が大きいため、あらかじめ税負担をシミュレーションしておく必要があります。