所得税の令和2事務年度の調査事績も国税庁から公表されていたので、昨日の法人税に続けて確認しておきます。
1.概要
・実地調査 : 59,683件⇒ 23,804件
・簡易な接触:371,812件⇒478,494件
・非違割合 :57.1%⇒54.0%
・1件あたり申告漏れ:945万円⇒1257万円(実地調査)
・1件あたり追徴税額:166万円⇒ 224万円(実地調査)
・調査日数 :7.4日⇒8.9日
傾向としては法人税と同様にコロナで実地調査ができない分、電話や文書等により簡易な接触が増えています。
その分実地調査先を厳選しているので調査日数は長くなり、1件あたりの追徴税額も増加しています。
2.重点項目
① 富裕層
・1件あたりの申告漏れ:1767万円⇒2259万円(全体の1.5倍)
・1件あたりの追徴税額: 581万円⇒ 543万円(全体の2.0倍)
・1件あたりの追徴税額(海外投資):1571万円⇒879万円(全体の3.2倍)
近年、株や不動産の大口所有者や経常的な高額所得者をターゲットに、チームを作って調査を強化しています。
② 海外投資
・1件あたりの申告漏れ:2406万円⇒2239万円(全体の1.5倍)
・1件あたりの追徴税額: 627万円⇒ 527万円(全体の1.9倍)
富裕層に限らず、海外投資を行う個人への調査が強化されています。
非違割合(申告漏れ件数の割合)が90%と高く、1件あたりの申告漏れ額も富裕層より多くなっています。
③ シェアリングエコノミー
・1件あたりの申告漏れ:1264万円⇒1872万円(全体の1.3倍)
・1件あたりの追徴税額: 349万円⇒ 494万円(全体の1.8倍)
ネットを介するオークション、FX、暗号資産、民泊など新分野への調査も強化されています。
特に暗号資産においては1件あたりの申告漏れ額は2456万円と最も多くなっています。
非違割合が90%と高く、事前に情報を集めて確実なところに連絡していることが窺えます。
④ 無申告
・1件あたりの申告漏れ:2160万円⇒2565万円(全体の1.7倍)
・1件あたりの追徴税額: 237万円⇒ 292万円(全体の1.1倍)
無申告は不公平感が強いことから以前から積極的に調査されています。
3.申告漏れランキング
① プログラマー(4927万円)、② 肉用牛畜産(3515万円)、③ 内科医(3339万円)、④ キャバクラ(2834万円)、⑤ 太陽光発電(2603万円)
富裕層やネット関連の調査を強化しているのは近年の傾向としてありますが、海外のCRS情報や支払調書、取引業者からのヒアリングなど実地調査以外で得られる情報が積極的に調査に活用されています。
1件あたりの申告漏れも多いので、実地調査が以前のようにできない現状にあっては、引き続き富裕層やネット関連の調査が強化されることが予想されます。