今さら聞けない減価償却費 ③

posted by 2021.09.6

kouji_genba_building

 減価償却費のキホンの3回目はキャッシュフローとの関係です。

 経費になるかどうかというのは言ってみれば決算書の見た目の話ですが、キャッシュフロー(お金の流れ)となると資金繰りに影響するので重要な観点です。

 

2.キャッシュフロー

 「減価償却費>借入金の返済額」なら資金繰りがまわる、という説明をすることがありますが、これはどういう意味なんでしょうか。

 

<キャッシュフローへの影響>

 1000万円の機械(期末に購入)を10年で減価償却するとします。
これをお金の流れで考えると、1年目は1000万円支払うのみなのでキャッシュフローは「▲1000万円」
2年目以降はお金は出ていきませんが、減価償却費として100万円計上します。
簡略化のため売上げ100万円、減価償却費100万円だけの会社とすると利益はゼロです。
 減価償却費はお金が出ていかないため、利益はゼロでもお金は100万円残り、2年目のキャッシュフローは「+100万円」ということになります。
つまり減価償却費を計上するとその分お金は残ります

 

<借入金との関係>

 上記の1000万円の機械を銀行借り入れで買った場合はどうでしょうか。
返済条件は2年目から元本月8.3万円(年100万円)、利息は簡略化のため無利息とします。

 元本返済は借りたものを返すだけで経費にならないので、借入金がない例と同じく利益はゼロです。
キャッシュフローは「+100万円」だったものが、返済で「▲100万円」減るのでゼロになります。
返済が「▲150万円」ならお金は50万円不足し、返済が「▲50万円」ならお金は50万円残ります。

ということで「減価償却費>借入金の返済額」であれば資金繰りはまわりますが、逆ならお金は足りなくなります。

 実際には他の経費や利息もあるし、法人税も発生するのでもう少し複雑ですが、減価償却費はキャッシュフローに大きく影響するということはイメージできたのではないでしょうか。

 

<自社ビルあるある>

 会社規模が大きくなってきてそこそこ儲かってると「そろそろ自社ビル」と考えることがありますが、建てた途端に資金繰りが悪くなることがあります。
自宅の場合は単純に家賃支払額とローン返済額を比較すればいいのですが、会社の場合は法人税支払いや減価償却費も考慮する必要があるため、想定外に資金繰りが厳しくなるケースがあります。

 流れとしては次のようになります。

・家賃の支払いがなくなると経費が減る。
・利益が増えるので払う法人税は増える。
・借入返済が家賃と同額程度でも経費にはならないので法人税は減らない。

となると減価償却費がいくらかによって法人税は変わりますし、先ほど見たように返済と減価償却費のバランスでキャッシュフローは大きく変わります。

 

 大きな固定資産を購入した場合はキャッシュフローがガラッと変わるのでどういう条件で借入をするかしっかりシミュレーションして決めていきましょう。