相続前後の引き出し

posted by 2021.09.7

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 相続税の申告をする際に亡くなった方の通帳の動きも確認しますが、よく見るのが50万円ずつの出金

 窓口でお金を引き出すには本人確認が必要なので、緊急時には身内の方がATMでお金をおろすことが多いと思います。
ATMの1日の引き出し限度が50万円なので通帳には50万円の記帳がズラズラと並びます。
これって問題ないのでしょうか。

 

 他の親族や相続人から「〇〇が勝手に引き出した!」と言われるケースは民法など法的な部分で問題ありますが、これは当然の前提としてそれ以外の税金に関する問題点を見ていきます。

 

1.相続前の引き出し

① 使途

 生活費や医療費で費消していれば亡くなった時点で残らないので相続税に影響はありません。
生活費は家族構成や嗜好などによって変わりますが、多くて月50万円ぐらいまでが目安です。
領収書などで内容を説明できれば多くすることは可能です。

 使っている場合でもモノによっては相続税に影響します。
例えば自宅改装、宝石、書画骨董など何かしら価値のあるものに変わっていれば相続財産に加算されることになります。

 

② 現金残高

 亡くなった日の現金をあとから数えることはできませんので、申告時や調査時には前後の動きから推定することになります。
引き出した金額から①での費消額を差し引いて計算します。

 なお、お葬式に関する費用をあらかじめ引き出しておくことがありますが、使うのは当然亡くなった後なので相続時点の現金にカウントされます。
すぐ使うだけに現金に入れ忘れることもあり、調査ではお葬式の費用は誰がどこから払ったか聞かれることがあります。

 

2.相続後の引き出し

 相続税は亡くなった瞬間の残高で申告しますので、あとでどんな出金があっても特に問題はありません。

 相続後の引き出しや支払いの中身が生前に発生した被相続人の債務である場合は債務控除として相続財産からマイナスすることができます。
内容としては医療費、光熱費、税金や保険の支払い、カードの引き落としなどがあります。

 

 相続前の多額の引き出しに関して審判で争われた事例があるので次回確認していきます。