あまり聞き慣れない言葉ですが、よくある「使用貸借契約」。
使用貸借とは賃貸借のように有償で貸し借りすることではなく、無償で貸し借りすることです。
タダで借りているだけに使用貸借は借主の権利が弱い傾向があります。
2017年に民法改正もあったので使用貸借についてあらためて確認しておきます。
<民法593条>
使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
改正前はものを渡せば成立する要物契約でしたが、改正後は契約により成立する諾成契約に変わっています。
<賃貸借との違い>
有償か無償かという点以外に次のような違いがあります。
① 借地借家法
・賃貸借 :借地借家法により借主の権利が強く守られます。
・使用貸借:借地借家法の適用はありません。
② 相続
・賃貸借 :借主が死亡した場合、賃貸借では相続人にその権利が承継され、借り続けることができます。
・使用貸借:原則として契約は終了します。
なお、貸主が死亡した場合は、賃貸借、使用貸借どちらの場合も契約は継続します。
③ 原状回復
・賃貸借 :賃借物を受け取った後に生じた損傷のうち、通常損耗および経年劣化を除いた部分について、その損傷を原状に復する義務を負います。
・使用貸借:目的物を受け取った後に生じた損傷は借主の原状回復の対象ですが、損傷が借主の帰責事由によらない場合には、借主は原状回復義務を負いません。
ちょっと違いが分かりづらいですが、使用貸借では「通常損耗および経年劣化」の扱いが民法上明確にされていません。
タダなんだから全部直すという考え方と、それも踏まえてタダで貸すという考え方とがあるため、契約の中でその範囲を明示していくことになります。
④ 費用負担
・賃貸借 :物件の修繕費など維持管理に必要な費用は貸主負担であり、借主が負担した場合は貸主に請求できます。
・使用貸借:必要費は借主負担であり、貸主に請求できません。
税金の取扱いも大きく違うので次回へ続きます。