配偶者居住権の消滅と贈与税

posted by 2020.03.27

tatemono_kaigo_shisetsu

 前回、配偶者居住権の概要や設定の仕方について見ていきましたが、今回は税金に関する部分を見ていきます。

 配偶者居住権で想定される使い方としては、子どもが建物の所有権を相続し、その上に配偶者居住権を設定するケースが考えられます。
こうすることで配偶者に財産が偏らず、今後の生活に必要な預金もバランスよく配偶者が相続することができます。

 評価額の計算は以前ご紹介しているので省略しますが、建物の固定資産是評価額が1500万円で、配偶者居住権が1000万円、建物所有権が500万円になったとします。

 

 その後配偶者居住権が消滅した時の課税はどうなるのでしょうか。
消滅事由としては次のものがあります。

A 配偶者の死亡又は期間満了
B 建物所有者の消滅請求(配偶者が適切に管理しない場合など)
C 合意や放棄による消滅
D 配偶者が建物取得
E 建物の滅失

 の場合は、制度の想定通りに使われているため、課税はありません。
配偶者が亡くなった時点で配偶者居住権(1000万円)が自然消滅し、建物を持つ子どもの所有権が制限付きのもの(500万円)から完全なもの(1500万円)になります。
結果として配偶者から子どもへ1000万円の価値が課税されることなく移ったことにより節税効果は一応あります。

 しかしBとCの場合には、消滅する配偶者居住権(1000万円)が配偶者から子どもに贈与されたことになり、多額の贈与税(231万円)が発生します。
合意の中には単なる配偶者の引っ越しも含まれますし、老人ホームに入居するために解除するケースも該当します。

 また、場合は配偶者が財産が増える話で、の場合は権利の対象そのものがなくなっているので建物の配偶者居住権部分について課税はありません。
ただし、敷地の配偶者居住権が消滅して、子どもの評価額が増えることになるので贈与税が課税されると考えられます。

 

 配偶者居住権は一度設定すると基本的に途中でやめられる性質のものではないので、その点も考慮して設定するようにしましょう。