令和2年度税制改正大綱 ⑧ 連結納税制度の抜本的改正

posted by 2019.12.25

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 税制改正大綱8回目は連結納税制度の見直しです、

 

<背景>
 連結納税制度は100%の出資関係がある企業グループを1つの法人とみなして法人税を計算する制度で、メリットとしてはグループ内の赤字と黒字を通算して法人税を計算できる点があります。
採用企業は親会社で1800社超、子会社1万3400社超に達し、増加傾向にあります。
ただし課題として、情報集約の難しさ、事務的な煩雑さ、特に1社で修正があればグループ全体を修正する必要がある点がありました。

 

<改正の概要>
 そこで親会社が全体をとりまとめて申告・納税する仕組みを改めて、グループ各社が単体で申告・納税する仕組みに改正されます。
計算が別々なので、どこか1社で修正があってもその会社だけを修正すればよくなります。
連結納税制度のメリットであるグループ内の損益通算については「グループ通算制度」という新しい仕組みにより継続されます。

 事務負担の軽減と損益通算メリットの継続により、企業の組織的再編を促し、企業グループの一体的な経営を後押しすることで、国際競争力の維持・強化を図ることとされています。

 

<改正のポイント>
・原則として各法人が単体で法人税を計算し、申告納税する。
外国税額控除や研究開発税制については引き続きグループで一体的に計算するので税優遇枠の共有が可能。
・欠損法人の欠損金額を他の法人の所得金額と損益通算可能(欠損金額は所得金額の比で各法人に按分)。
グループ通算制度導入前に発生した欠損金については、発生会社でしか控除できない。
・中小法人の優遇についてはグループ内に1社でも大法人があれば適用不可。
電子申告が強制(改正前は任意)

 

<適用時期>
2022年(令和4年)4月1日以後開始事業年度から
・システム修正や法整備の期間を考慮して2年の猶予が設けられます。

 

 今回の改正は平成14年度の導入以来初めての抜本的な改正で、基本的にはデメリットである事務手間を軽減し、メリットである損益通算を残す制度となります。
ただし軽減されたとは言え、所得の調整計算はあり、それなりに手間はかかるので劇的に新規に採用する会社が増える改正ではないのかも知れません。
採用するかどうかという点に関しては、欠損金の持ち込みや交際費の限度額調整などの今後の具体的な取扱いも影響を与えそうです。