税理士賠償責任保険

posted by 2019.12.11

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 税理士が顧客に訴えられる件数が増えている、というゾッとする記事が日経新聞に出ていたので自戒を込めて紹介したいと思います。

 どういうことかと言うと、税理士が訴訟リスクに備えて加入する賠償責任保険の支払いが5年で2倍になっているそうです。
この保険は税理士が顧客から「税理士のミスにより税金を多く払わされた」と訴えられて賠償金を支払った場合に、損失を補填するための保険です。

 

 事故事例として最も多いのは消費税で、2018年7月1年~2019年6月30日の1年間で258件、8億4800万円あり、全体の約半分を占めています。
消費税の事故が多くなる原因としては次のようなことが考えられます。
・原則課税と簡易課税での税額の差が大きい。
・計算方法の選択を前もってしないといけない(前期末まで)。
・改正が多く複雑。

 消費税の中でも多いのが「簡易課税の取りやめができておらず、設備投資時に還付を受けられなかった」、「簡易課税を選べば税額を安くできたのに届出を提出していなかった」というものです。

 

 消費税の次に多いのが法人税で約3割を占めます。
中でも多いのが「所得拡大促進税制の適用漏れ」で54件と法人税の中で約4割を占めています。
この規定は従業員の給料が増加した場合に税額控除が受けられる制度ですが、計算が複雑ですぐには気づかないこと、手間がかかるのでギリギリの決算の場合に検討する余裕がない、といったことが原因として考えられます。

 

 その他の税目では、所得税「上場株式の譲渡損失の繰越控除の適用失念」相続税「小規模宅地等の特例の適用誤り」贈与税「相続時精算課税選択届出書の提出失念」などが目立ちます。

 

 税理士のうっかりや知識不足は論外ですが、こういった事故を防ぐためには、十分な検討ができるよう早め早めに処理することや、最も有利な規定を選択できるようにお客様と十分なコミュニケーションを取って情報を得ておくことが重要になってきます。