金地金による消費税還付スキーム

posted by 2019.09.4

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 前回の続きでマンション建築時に消費税の還付を受けるためのスキームのその後を見ていきます。

 マンションの家賃収入は非課税売上げなので対応する建築費に含まれる消費税の還付が受けられません
そこで課税売上げを作ることを思いつきます。
昔は工事現場に自販機を置くスキームが流行りましたが、今回の例では時期や金額を操作しやすい金地金の販売でした。

 とは言え、マンションが完成して入居者から家賃収入が入ると、金地金の課税売上げが薄れてしまうので、家賃収入が入る前に課税期間を切って、売上が金地金の販売だけの課税期間を作り出します。
すると課税売上割合が100%になり、消費税全額の還付が受けられます。

 

ところが税務署から「待った」がかかりました。
ポイントは課税仕入れの時期です。

第1期(11/5設立~11/30)
・11/10 建物売買契約
・11/20 金地金売却(売上げはこれのみ)

第2期(12/1~11/30)
・12/2  建物所有権移転登記(引き渡し、売買代金支払いも同日)
・12/2  家賃収入発生(管理会社と賃貸借契約締結)

 不動産の課税仕入れの時期は、原則は引き渡し日ですが、例外として契約日も選択できます。
そこで第1期に建物を購入したものとして申告しましたが、税務署から否認され、裁判でも負けています。

 

 判決の理由は次のようなものです。

・課税仕入れの時期の特例は、権利の実現が未確定な場合についてまで認めるものではない。

・売買契約の内容や履行状況からみて、登記があり、使用可能になった12/2が引渡しの日であり、同日に売り主としての履行義務が果たされ、権利が確定した日と言える。

売買契約日である11/10は売買代金請求権が抽象的に発生していたにとどまり、客観的にみて権利の実現が可能な状態になっていない

 

 納税者は通達をタテに争いましたが、裁判所は実質で判断し、あまりに作為的であれば例外の適用は認めないとしました。
やや力業的な部分があるので、同じようなスキームを封じ込めるためにその後消費税の改正が行われ、今は同じ方法で還付を受けても3年平均を取る必要があるなど還付の効果はかなり薄まります。

 

 法律や通達はガチガチに守って従うものではなく、経営の障害にならないよう”解釈”していくものと考えますが、あまりに法の趣旨から外れてしまうと、たとえ表面上OKとされていても否認されることがあるので注意しましょう。