国外財産調書未提出で初の告発

posted by 2019.08.2

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 先日、国外財産調書の未提出で初めて告発されたというニュースが出ていました。
2014年に制度ができて以来、初めての告発だけに大きく取り上げられましたが、その内容や背景について解説します。

 

<事件の概要>
・家具輸入会社の社長が2億1500万円の所得を申告せず8300万円の所得税を脱税。

・脱税した金をタイの知人口座に入金し、現金で日本へ持ち出し。

売上げの一部7300万円(2017年末)を香港の口座に置いていたが、国外財産調書は未提出。

 

<国外財産調書制度のおさらい>
年末時点で海外に5000万円超の不動産や金融資産を持っている国内居住者は翌年3/15までに税務署に調書を提出する義務があります。

・調書の提出があれば過少申告加算税を5%軽減(所得税、相続税)、調書の提出がなければ過少申告加算税を5%上乗せ(所得税)

未提出の罰則は1年以下の懲役または50万円以下の罰金。

 今回は所得税に関して重加算税が課された上で、告発されているので所得税法違反で10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金またはその併科、国外送金等調書法違反に関して1年以下の懲役または50万円以下の罰金という流れになりそうです。
所得税法違反や法人税法違反では、脱税の目安が1億円と言われていますが、今回は手法も悪質であったことから所得税法違反と国外送金等調書法違反の両方で告発となったようです。

 

<告発の背景>
 日本は2018年からOECDのCRS(共同報告基準)に参加しています。これは各国の税務当局が銀行の口座情報を報告、交換できる制度で、100以上の国や地域が加盟しています。
以前から租税条約に基づいて個別に情報収集して調べる方法はありましたが、手間や時間がかかっていました。
CRS制度では、自動的、電子的、義務的に毎年大量に口座情報が集まるので調査の効率と精度が大幅に上がります。
その第1回提供が2018年9月にあったため、今回の告発にも利用されたものと考えられます。
ちなみにCRSによる情報交換国に香港、シンガポール、スイスなどは入っていますが、タイは今のところ加入はしていますが開始はしていません。

 

 国外財産調書の提出は2017年分で9551件(3兆6662億円)となっていますが、様子見で提出してこなかった人も多そうです。
自動的に報告されるだけに、提出してないと変に疑われることにもなりかねず、今後はマジメに提出した方がいいでしょう。