医療と消費税

posted by 2018.10.26

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 2019年10月の消費税率10%への引き上げまで1年を切りました。
これに向けた環境整備として「酒類・外食を除く飲食料品」と「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」を対象に8%の軽減税率導入が決まっています。

 

 他方、1989年の消費税導入当初より社会政策的配慮から非課税とされてきたものに「社会保険医療の給付等」があります。
このため、患者が医療機関に支払う保険診療の対価に消費税はかかりません。

 しかしながら医療機関は、病院建物の建設、医療機器及び薬剤購入などに際して消費税を支払っています。この支払消費税分は、国が定める診療報酬に上乗せするかたちで医療機関に補填されています。
つまり、医療は非課税とされながら実質的には課税されているということになります。
 この診療報酬への上乗せによって各医療機関の支払消費税分を過不足なく補填することは困難で、医療機関が多額の設備投資等を行えば消費税分が補填不足となり、逆に過剰な補填を行なえば利益が生まれることになってしまいます。
 さらに先述の軽減税率が導入された場合、飲食料品・新聞の税率8%に大して、社会政策的配慮を要する薬価等が税率10%という税率の逆転が生じます。

 この問題はかねてより課題とされながらも結論が出ていません。
医療界からは、非課税制度を前提に「診療報酬への上乗せによる補填過不足分」を医療機関が申告することで個別に対応すべきという主張もあります。

 同じように社会政策的配慮から非課税とされているものに賃貸住宅の家賃があります。
事業者が賃貸マンションを建築した場合には、多額の消費税を支払うことになりますが、売上げが非課税であるために控除や還付を受けることはできず、支払消費税分を上乗せして家賃を決定することになります。

 

 非課税売上げには消費税控除の問題はついてまわりますが、今後のさらなる増税も予想される中、実際に負担する国民に納得のいく制度設計がなされるよう期待されます。