特別償却と税額控除②

posted by 2017.10.16

dac8f4601a8c275754e979a8e0e6fe54_s
 前回、特別償却税額控除の税負担の比較をしましたが、その続きで結局どちらを選ぶかという判断基準について見ていきます。

<特別償却>
・資金繰りを考えると目先の法人税を減らしたい。

今年は良かったが来年以降は分からないし、来年以降利益が出なくなり減価償却できないかも知れないので早く償却したい

・2年かけても税額控除が使い切れない。

税額控除は法人税の20%が上限なので法人税が少ないと控除し切れません。1年繰り越せるのでチャンスは2回ありますが、それでも使い切れない場合は税額控除が無駄になります。
一方、特別償却は償却費が多すぎて赤字になったとしても欠損金の繰越が9年ありますので特別償却の恩恵は受けられます。

 

<税額控除>
安定して利益が出るのでトータルで法人税が安い方がいい。

 このように通常であれば税額控除を選択し、特殊な事情があれば特別償却を選択することになります。

 

 ただし投資額が大きいと税額控除の2年では消化しきれないし特別償却すると赤字になって銀行等への印象が悪いケースがあります。
このような場合、特別償却準備金という方法を使うこともあります。

<例>

即時償却できる機械(耐用年数10年・定額法)を8000万円で購入。

<初年度の処理>

会計上(減価償却費)800万円(機械装置)800万円

剰余金(繰越利益剰余金)7000万円(特別償却準備金)7000万円

法人税:7000万円を別表四で減算(法人税は約2450万円減少)

 剰余金の処分は損益計算書には出てきませんので、通常の特別償却のように償却費が多すぎて赤字になることはありません。
法人税の計算上7000万円減算して所得が赤字になった場合は9年間繰り越しが可能です。

<2~8年目の処理>

会計上(減価償却費)800万円(機械装置)800万円

剰余金(特別償却準備金)1000万円(繰越利益剰余金)1000万円

法人税:1000万円を別表四で加算(法人税は約350万円増加)

 翌年以降、耐用年数10年以上なら7年、5年以上10年未満なら5年で取り崩します。法人税の計算上は取り崩した分を加算するのでその分法人税は増えます。

<9~10年目の処理>

会計上(減価償却費)800万円(機械装置)800万円

 

 なお、この方法は大企業など税効果会計を採用している場合は効果はありません。法人税等調整額により毎期の損益計算書にも反映されます。

 少し込み入った話になりましたが、大型の投資をして決算書への影響が大きい場合は特別償却準備金も検討してみて下さい。