昨日の続きで相続税における伝家の宝刀である総則6項について見ていきます。
最近、刀が抜かれた事例としては非上場株の評価に関するものがあります。
生前に新株発行や配当をすることで株式の評価額を下げ、約9億7000万円もの節税につながったという事例です。
一審の地裁では納税者勝訴、二審の高裁では「相続税の負担減を期待して行ったことは明らか」と判断され、国税当局の勝訴となりました。
その後納税者が上告したため、最終的な判断は最高裁で行われることになります。
この中で一つの論点となっているのが「類似業種比準価額」の使用です。
大まかに分けると非上場株式の評価方法は4つあります。
① 配当還元価額 :少数株主向け
② 純資産価額 :小規模企業向け
③ 類似業種比準価額:大規模企業向け
④ ②と③のミックス:中規模企業向け(この中でさらに大中小)
③の類似業種比準価額は同じ業界の上場企業の平均から計算されますが、評価額が低く出る傾向があります。
それを狙って、③が使えるように会社の状態を寄せていくことも可能です。
1.類似業種比準価額が使えるかどうか(②⇒③④)
・配当、利益、純資産のうち2つ以上が0だと類似が使えない(上場企業からは遠い状態)
⇒あえて配当することで類似が使用可能になることも
2.類似業種比準価額のみで評価できるか(③のみ)
大会社に該当すれば、類似のみで評価できます。
社歴が長い場合や安定的に利益が出ていると純資産価額が高くなりがちですが、類似のみで評価できれば会社ごとの個別要素の影響をなくせます。
大会社になるかどうかの規模感は業種によって変わりますが、サービス業の場合は次のような基準があります。
・従業員70人以上(この条件のみで該当)
・従業員35人超または総資産価額15億円以上、または売上15億円以上
⇒期末時点で多く雇用したり、増資することで数値の底上げが可能
3.類似業種比準価額を多く使えるかどうか(④)
・小会社:類似 ×50%+純資産 ×50%
・中の小:類似 ×60%+純資産 ×40%
・中の中:類似 ×75%+純資産 ×25%
・中の大:類似 ×90%+純資産 ×10%
⇒下へ行くほど類似を多く使えるので評価額が低くなる傾向があります。
節税策としての評価を下げる工夫は否定されるものではありませんが、節税以外の目的がなく経済合理性が無い場合や、相続税の軽減額があまりに大きい場合には総則6項のターゲットになることはあり得ます。
節税という観点で考えると、株の評価額を定点観測しながら、タイミングよく贈与することは有効な対策と言えます。


