相続手続きの一括化

posted by 2024.08.20

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 先日相続のあったお客様から「銀行の手続きは1つずつしないといけませんか?」というご質問をいただきました。

「残念ながら1つずつするしかありません」とお答えしましたが、来年3月には一括で照会できる制度ができそうです。

 

 相続税は元々資産家だけに関係あるものというイメージでしたが、平成27年に基礎控除から縮小されてから一般の人にも関係する税金になりました。
基礎控除が「3000万円+法定相続人の数×600万円」なので、妻と子2人なら4800万円、子2人だけなら4200万円が非課税枠となります。

 都心部に自宅があればこの非課税枠は簡単に超えてきます。
そうなるとみんなに相続税がかかるかというとそういうわけではなく、自宅であれば『小規模宅地等の特例』により土地の評価を8割減できますし、配偶者であれば『配偶者の相続税額の軽減』により1億6000万円までは相続税がかかりません
これらの特例により実際に相続税を払う人はぐっと減りますが、特例を使うには相続税の申告が必須です。
となると手間としては通常の相続税の申告とほとんど変わりません。
メインで動く子どもさんはサラリーマンであることが多く、遠方にいる場合もあるので書類を集めるだけでも一苦労です。

 

 そこで期待されるのが一括で情報照会できる「預貯金口座管理制度」ですが、制度のベースとなるのは「マイナンバー」です。
現行でもマイナンバーと口座を紐づけできる制度がありますが、1つの銀行に照会を掛ければ全口座の内容が通知されるようになります。
前提として本人が生前に全口座を紐づけしておく必要があります。

 マイナンバーカードの普及率は7割を超えていますが、口座の紐付けは財産を把握される警戒感からか3メガバンクの集計では4%に留まっています。
信頼性の向上と利便性の周知が制度定着のカギになってきそうです。

 

 なお戸籍の一括取得制度である「戸籍情報連携システム」は今年の3月に稼働していて、不動産を一括照会できる「所有不動産記録証明制度」は2026年2月2日に稼働予定です。
既にある有価証券や保険の一括照会制度と併せて一つのサイトに集約できれば、相続税の申告はかなり楽になるので早期実現が期待されます。