前回の続きで美術品の物納に関する制度について見ていきます。
<概要>
文化庁による登録を受けた美術品については、美術品の適正な管理と一般への公開促進の観点から、物納順位を第1位として物納しやすくする特例が設けられています。
<登録美術品制度>
所有者が生前に文化庁の登録美術品制度による登録を受けていることが物納の前提になります。
現在、絵画、陶磁器、太刀など83件が登録されていますが、次のような流れで登録されます。
① 納税者:美術館と相談して文化庁へ申請書提出
② 文化庁:有識者からの意見聴取などを経て可否決定
③ 納税者:登録通知後3か月以内に美術館と公開契約を締結
④ 納税者:美術品の引渡し
⑤ 美術館:適切に保管・公開
<相続があったら>
① 相続人から文化庁へ評価依頼
② 物納申請(価格評価通知書と美術館との契約書添付)
③ 不動産と同順位の第1順位として物納可能
<納税猶予>
登録美術品制度とイコールではありませんが、特定美術品(重要文化財や登録有形文化財で一定のもの)については、相続税の納税猶予の制度もあります。
生前に美術館と契約して特定美術品を預けていて、相続後も継続して預ける場合には特定美術品の80%相当の相続税が猶予されます。
納税猶予の場合は物納と異なりあくまで猶予ですが、所有権は国ではなく引き続き自分にしておくことができます。
物納も納税猶予も生前に登録等して美術館に預けていることが前提となります。
対象となる作品は限られそうですが文化的に価値の高い美術品をお持ちの場合は、管理の観点からも早めに準備しておいた方がいいでしょう。