相続時精算課税 VS 暦年課税 ④ メリット

posted by 2021.09.21

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 前回は相続時精算課税制度のデメリットを取り上げましたが、もちろんメリットもあります。
どういう場合に活用すればいいのでしょうか。

 

<相続時精算課税のメリット>

① 争族対策

どうしても特定の相続人に渡したい財産があるけど普通に贈与するには高過ぎるし、コツコツやると時間がかかる、というケースがあります。
遺言を書けば渡せますが、自分が亡くなってからのことなので不安は残ります。
このような場合に相続時精算課税で確実に生前に財産を移転することができます
もちろん生前に贈与すれば絶対に争いにならないわけではありませんが、一定の効果は期待できます。

 

② 収益移転

不動産など収入を生む財産については、財産そのものの価値に加えて毎年の”上がり”も財産が増える要因になります。
そこで相続時精算課税で子や孫に贈与すれば、それ以降の収益は子や孫のものにすることができます。また収益を移転すれば所得税や住民税の軽減が期待できます。

 

③ 値上がり確実

デメリットのところで、相続時精算課税で贈与した財産が値下がりしたら逆に相続税が増えてしまう点を取り上げましたが、値上がりすればメリットです。
将来を予想するのは難しいですが、開発が進む地域の土地や同族会社の株式など値上がりの可能性が高そうなものは相続時精算課税に適しています。

 

④ 相続税ゼロ

贈与しても結局全部足し戻すので相続対策にならないことがデメリットでしたが、そもそも相続税がかからない規模であれば、相続時に足されても影響はありません。
ただし平成27年の相続税増税(基礎控除縮小)で相続税がかかる人が増えたので以前ほどこのメリットはないと言えます。

 

 4回にわたって相続時精算課税制度と暦年課税制度との比較やメリット、デメリットについて見てきましたが、1つ言えるのは人によって状況が様々なので計算してみないと分からないという点です。

 税制改正大綱で何か変わるかも知れませんが、それも踏まえてシミュレーションした上で贈与を進めていくのがいいと考えます。