非上場株式の売買 ② みなし配当

posted by 2021.09.10

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 昨日の続きで非上場株式の「株価の決め方」を書くつもりでしたが、税金の重要な論点を1つ書き忘れていたのでそこから書きます。

 

<みなし配当>

 非上場株式に特有の取り扱いとして「みなし配当」があります。
株を売った場合は『譲渡所得』になりますが、発行会社に売った場合(買う側から見れば自己株式)には『配当所得』とみなされるケースがあります。
最初に額面金額で払い込んでいた場合、それを超える部分はすべて配当になります。

 

<税率>

 何が変わるかというと税率です。
『譲渡所得』であれば、20.315%の固定で何千万でも何億でも同じ税率です。
ところが『配当所得』になった場合は総合課税で累進累進税率が適用されます。
税率は所得の大きさに応じて15.105%~55.945%の幅があります。

 なぜこのような扱いがあるかと言うと、会社が株を高く買い取ることは実質的に利益分配に当たるためです。
みなし配当の規定がなければ、配当でもらう代わりに株を買い取ってもらって20.315%の低い税率で完結させることができてしまいます。

 

<持ち株会社化とみなし配当>

 みなし配当は発行会社に買い取ってもらった場合に発生します。
発行会社の上に持ち株会社を作って、その持ち株会社に買い取ってもらえば、みなし配当にはなりません。
このことも持ち株会社を作ることの節税効果の1つです。

 

<みなし配当の例外>

 発行会社に買い取ってもらってもみなし配当とされないケースがあります。
相続後に相続人が発行会社に売却する場合はみなし配当にはならず、全額譲渡所得になります。
ただし買う時期については期限があり、相続税の申告期限から3年以内、つまり亡くなってから3年10か月以内となっています。
この規定は理屈どうこうというよりは相続人の納税資金の確保とスムーズな事業承継のための特例と考えられます。

 

 次回は「株価の決め方」を見ていきます。