非上場株式の売買 ③ 株価算定

posted by 2021.09.13

toushika_kabunushi_happy

 前回の続きで非上場株式の株価の決め方について見ていきます。

 上場株式のように市場で決まるわけではないので、いくらで売買するかは基本的に自由です。

というと身も蓋もないので目安となる金額や税務調査での見方について確認します。

 

<M&A寄りの決め方>

 将来生み出すキャッシュフローから割り戻すインカムアプローチ、同業他社や取引事例から推定するマーケットアプローチ、資産価値を積み上げるコストアプローチといった方法があります。
公認会計士さんやM&A仲介会社などがこれらの方法で算定されてます。

 

<税務での考え方>

 売買する場合の株価は相続税を計算する際の財産評価基本通達をベースとした評価方法により計算します。
相続税は亡くなった瞬間に会社を解散したと仮定して株価を算定します。
一方、売買する場合の株価は解散価値ではなく、継続企業であることを前提としているため、財産評価基本通達を少しアレンジして計算します。

 

<財産評価基本通達による評価(相続税)>

 株主構成や会社規模に応じて評価方法が変わります。

① 類似業種比準方式

 類似する業種の上場会社の株価、配当、利益、純資産と評価会社との数値を比較して計算します。

② 純資産価額方式

 時価で評価した財産の合計から債務を控除し、含み益への法人税を控除して差額としての純資産を計算します。
時価評価については、土地は路線価、建物は固定資産税評価、保有する上場株式は市場価格によって計算します。
昔に買った土地で簿価が低いものがあれば含み益が大きいので株価は高く出ます。

 大会社については①のみ、中会社と小会社は①と②をブレンドして評価します。小会社の場合は、「①×0.5+②×0.5」で半々になります。

 なお、支配権のない少数株主の場合は配当をベースにした「配当還元方式」で評価するので株価は大幅に安くなります。

 

<売買のための評価(法人税・所得税)>

 財産評価基本通達をベースにしつつ、次の点をアレンジします。

・大株主(中心的な同族株主)であれば規模に関わらず小会社扱い

・解散価値ではないので含み益への法人税を控除しない

・土地や上場株式は相続税評価ではなく時価で計算

 土地や上場株式の相続税評価は評価の安全性の見地から実際に売れる金額よりやや低めに出ます。
売買を前提とする評価の場合は厳密に考えるため、相続税評価(路線価)ではなく時価(実勢価格)を使います。
実勢価格については不動産鑑定評価を取ったり、不動産屋さんに相場を出してもらって計算します。

 

 いろいろと書いてきましたが、結局いくらなんだというと、税務署に関しては最後の「売買のための評価」をしていれば基本的には通ります。

 当事者間での合意で言うと、税務での評価額も参考にしつつ、いくらで買ったか、将来性をどう考えるか、といった点も加味して決めているケースが多いようです。