配当は申告すべき?①

posted by 2020.02.27

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 確定申告の中で簡単そうで複雑なのが、株に関する税金。
「特定口座・源泉徴収あり」にしていれば基本的に何もしなくていいのですが、損失がある場合、複数の口座を持っている場合、扶養家族になっている場合などには節税できる余地もあり、逆に思わぬ負担が待っているケースもあります。

 

 今回はまず配当に関する税金を整理します。

1.上場株式の配当

① 申告不要

 特定口座であっても一般口座であっても、上場株式の配当からは所得税15.315%と住民税5%が天引きされています。
これで納税は完結しているので何も手続きしなくても問題ありません

 

② 確定申告で総合課税

 確定申告して給与所得や事業所得と合算して所得税を計算します。
税率は他の所得と合わせて超過累進税率により課税されるので、5~45%の幅があります。
総合課税すると配当控除という特典が受けられます。これは配当の5%または10%を所得から控除できる制度で、総合課税の場合のみ適用が可能です。
配当控除を使った場合の税率と天引きされている20.315%を比較して、総合課税により申告した方がいいかを検討します。

(例)
・給与収入 500万円(給与所得346万円)
・所得控除  38万円のみ
・配当    10万円
・簡略化のため、復興特別所得税は省略

<② 総合課税の場合>
 課税総所得金額  318万円(346+10-38)
 所得税   220,500円(税率10%)
 配当控除  ▲10,000円(10万円×10%)
 差引    210,500円
 配当源泉  ▲15,000円
 年税額   195,500円

<① 申告不要の場合>
 課税総所得金額  308万円(346-38)
 所得税   210,500円(税率10%)
 配当控除        0円
 差引    210,500円
 配当源泉        0円
 年税額   210,500円 

 ②と①を比較すると、②の方が所得税が2万円少なくなります。
これは所得税率の10%が配当控除の10%で消えて0になり、源泉徴収された15,000円が全額返ってきている状態です。

 

③ 確定申告で申告分離課税

 ”申告”した上で、給与など他の所得と”分離”して税額を計算する方法です。
税率は20.315%(所得税15.315%、住民税5%)、配当を受け取る際に源泉徴収される税率と同じで、配当控除も受けることができません。
では、なぜわざわざこの方法を選択するかというと上場株式の売却損があれば損益通算して、天引きされた所得税の還付を受けられるためです。

 なお特定口座内で配当を受け取っていれば、上場株式の売却損と配当とを自動的に損益通算して既に還付されているため、申告する必要はありません。

 

 ここまでが基本編で、実際に判定する際は、所得の多寡による②の税率の違いや申告することによる健康保険料への影響なども加味していく必要がありますが、長くなるので次回へ続きます。