相続税は、相続等により取得した財産の、その取得時の価額を基礎として課税されます。財産評価とは、この「取得の時における価額」を計算することです。
国税庁の統計によると、相続財産のうち約60%が土地建物等の不動産となっています。ここでは「土地」「建物」「株式」の評価方法について簡単に解説します。
(1)土地の評価
土地の評価方法には路線価方式と倍率方式があります。評価しようとする土地がどちらの評価方式によるのか、また、下記に出てくる路線価や補正率、評価倍率などは毎年国税庁が公表している財産評価基準(路線価図)に記載されています。
①路線価方式
評価しようとする土地の接している道路の路線価をベースにして、その土地の状況や形状等を考慮した補正を行い、この補正後の路線価にその土地の面積を乗じて評価額を算出する方式です。
評価額=路線価×補正率×地積 |
○路線価…宅地の価額が、おおむね同一と認められる一連の宅地が面している道路ごとに、売買実例価額、精通者意見価格等を基礎として国税局長が評定したその路線に接する宅地の1㎡当りの価額。
○補正率…土地の形状や状況により、以下のような補正を行います。
2つ以上の道路に接する土地 |
1つの道路に接する土地に比べて利便性が高いため、 一定の加算があります。 |
奥行価格補正 |
奥行が長すぎたり、短すぎると利便性が低くなるため、 一定の減額があります。 |
間口狭小補正 |
間口が狭すぎると利便性が低くなるため、一定の減額が あります。 |
無道路地、がけ地など |
利便性が低いため、一定の減額があります。 |
②倍率方式
固定資産税評価額に、各地域ごとに定められている評価倍率を乗じて評価額を算出する方式です。
評価額=固定資産税評価額×評価倍率 |
○評価倍率…国税局長が一定の地域ごとに、その実情に即するように定めた倍率
※倍率方式には、路線価方式のような各種の補正はありません。これは固定資産税評価額が間口や奥行きなどを考慮した上で決定されているためです。
(2)建物の評価
建物の評価額は固定資産税評価額となります。
また、アパートなど他人に賃貸している建物については、固定資産税評価額に対して、借家権割合と賃貸割合とを基準として一定の調整を行った金額が評価額となります。
自用家屋 |
固定資産税評価額×1.0 |
貸家 |
固定資産税評価額×1.0×(1-借家権割合×賃貸割合) |
(注)借家権割合…大阪国税局管内では30%と定められています。
(3)株式の評価
上場株式のように毎日の取引相場(時価)が分かるものは、その時価を基に評価します。
非上場株式のように取引相場のない株式については、その会社の株主構成や保有資産の割合などによって区分し、その区分ごとに定められている評価方法によって評価します。