本来、役員への退職金は株主が納得すればいくら出しても問題ありません。
しかし、不相当に高額な場合は税務署が口出ししてきます。
税務署は”不相当に高額”かどうかを同業や類似規模法人の実績から判断します。
この実績を表にして公開してくれたら判断が楽なんですが残念ながら非公開です。
なぜ非公開かというと
・公開するとみんながギリギリを狙ってくる。
・役員の仕事内容や貢献度は個別に異なるので一概には言えない。
といった理由からです。
そうなると個別の事例を判例で積み重ねていって、”相場”をつかむしかありません。
※功績倍率を使った退職金の計算方法は前日の記事を参照して下さい。
<役員退職金の功績倍率に関する判例>
・東京高裁(昭和56.11.18)…3倍(7法人13人の事例の最高功績倍率)
・仙台高裁(平成10.4.7)…3.18倍(4法人5人の事例の最高功績倍率)
・東京高裁(平成25.9.11)…1.91倍(同地域の同業類似法人の平均功績倍率)
3つめの判例が平均功績倍率を採用した点で特殊です。
従来は最高功績倍率を上限として採用できたのですが、この判例ではよほど似た会社を持ってこない限り、最高功績倍率を採用できないとしています。
退職金は税制上有利なこともあり、税務署の目も厳しいです。
退職金規程や株主総会議事録など形式面をまず完璧に整えた上で、高額な退職金については判例等で十分検証しておく必要があります。