外れ馬券訴訟の勝敗

posted by 2018.01.26

sports_keiba

 外れ馬券が経費になるかどうかは平成27年の最高裁判決で納税者が勝って話題となり、それを受けて所得税基本通達が改正されました。

 営利を目的とする継続的行為であれば一時所得ではなく雑所得に該当します。
一時所得であれば当たり馬券に対応する1枚の購入費しか経費になりませんが、雑所得なら外れ馬券も含めて経費になるので大幅に経費が増えます。

 それなら「オレもオレも」ということで裁判が何件か起こされているのですが最近確定したものが2件あります。

 

【平成29年12月20日確定 納税者Aさん敗訴

・ 平成20年~平成22年の3年間のほぼ全ての土曜日・日曜日に馬券を購入(年1500~2000回、勝ったのは100~200回)

過去の成績の分析から各馬の実力と適性を把握し、配当比率に着目して馬券を購入。

・ソフトウェアは未使用。

3年の成績は▲7000万円。

 

【平成29年12月15日確定 納税者Bさん勝訴

・ 平成17年~平成22年の6年間に、開催される全日程(104日)の9割超のレースで馬券を購入(年2000回以上)

・テレビや競馬新聞等で集めた情報に基づき,独自の絶対評価を実施。

的中の確率と配当比率に応じた購入パターンを定めてその基準にしたがって馬券を購入。

・ソフトウェア未使用。

・6年の成績は+5億7000万円

 

 判決の時期は近いのに片や勝訴、片や敗訴となっています。
では通達がどうなっているかというと、次の要件を満たせば「営利を目的とする継続的行為」に該当して”雑所得”となります。

① 馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用。

② 長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入。

③ 多額の利益を恒常的に上げている。

 

 ①はどちらも未使用、②はどちらもほぼ該当、③は敗訴したAさんが▲7000万円勝訴したBさんが+5.7億円という違いがあります。

 これだけ見るとAさんは利益が出ていないから敗訴したように見えますがそれだけではなくて②の徹底度に違いがあります。
Aさんが実際にどのような選定方法に基づき、どの種類の馬券をどの程度の数量で購入したか明らかでないことから、回数は多いものの趣味でやっている一般の馬券購入と変わらない、という判断になっています。

 

 なお今の通達はソフトウェアを使うことを前提としていますが、勝訴したBさんはソフトウェアを使っていなかったことから判決を踏まえて通達が再度改正される可能性があります

 

 もしBさんにお会いできたら、裁判での勝ち方ではなく、年間1憶円以上馬券で利益を出し続けるノウハウの方を聞いてみたいところです。