繰延税金資産とは

posted by 2014.05.29

 新聞で決算発表の記事が多く見られる時期ですが、何度聞いても分かりにくい言葉の1つに”繰延税金資産”があります。

例えばこんな風に使われています。

 

業績が低迷していた企業がリストラ効果などで業績回復を見込む場合、繰り延べ税金資産を大きく積み増すことがある。企業の業績や財務を精査する監査法人が安定して黒字が出ることを前提に同資産の計上を認めるため、「お墨付き」ともいえる。繰延税金資産を積み増すと会計上の税負担が減るため、純利益を押し上げる効果がある。

 

業績がよくなっていることは分かりますが、そもそも税金なんでしょうか、それとも資産なんでしょうか。今さら聞けないこの言葉を解説します。

5/28の日経朝刊による用語解説はこうなっています。

 

会計と税務の取り扱いの違いを埋めるための仕組み。例えば企業が事業や資産のリストラなどに踏み切る場合、貸倒引当金や設備の評価損などを計上することが多い。これらは会計上は損失として処理できても、税務上は損金として認められないケースがある。そこで会計上は税金を払ったとみなさず、税金相当額などを繰延税金資産として計上して帳尻を合わせる仕組み。

 

まず文頭の”会計と税務の取り扱いの違い”ですが、これは目的が違うことがその発生原因です。

 会計は債権者(銀行など)や株主に対して業績を報告するのが目的ですが、税務は税金を計算することが目的です。
会計は将来の見通しを含めてより慎重に保守的に計算します。
したがって見込みも含めて損失が出そうであれば早めに表に出します。
これに対して税務は確実なことしか経費や損失として処理できません
見込みで経費になるようなら税金はいくらでも操作できてしまいます。

 この目的の違いから会計の方が早めに損失が出ますが、税務では損失扱いしないため、税金はそのままです。通常、利益の4割程度が税金ですが、見た目には税金が多くなります。
将来的に見込みで考えていた損失が現実になった時は、その時点で税金計算上も損失にするので、その時点での税金は減ります。
このように税金は前払いの状態になることが多いのですが、この前払いの税金が”繰延税金資産”です。

 用語解説の最後に”帳尻を合わす仕組み”とありますが、これは利益に対する税金を約4割になるように決算書上は前払いの税金を削って、翌年以降取り返すものとして資産に振り替えることを指しています。

 

 会計と税務での損失の認識の違いを税金面から調整するのが、”繰延税金資産”ですが、ではそのことと業績の予想とはどう関係するのでしょうか。

前払いの税金はすべて計上するわけではなく、通常5年以内の利益で消化できそうなものだけ計上します。したがってずっと赤字予想であれば、税金も出ませんし、将来の税金の前払いという側面もありません。
逆に業績回復局面であれば今まで計上できなかった繰延税金資産が決算書に登場して、見た目の税金が減り利益は増えます

 繰延税金資産を計上する企業が増えているということは、先行き不透明な状況から前向きに利益が読める通常の状況に移行していることを表しています。