合併と繰越欠損金③

posted by 2021.05.14

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 前回は欠損金のある会社を買収後に合併した場合の引継ぎ制限でしたが、あと2つ論点があるので見ておきます。

1.含み損のある資産を引き継いだ場合

2.存続法人の欠損金の利用制限

 

1.含み損のある資産を引き継いだ場合(特定資産の譲渡等損失額の損金不算入)

<概要>
 繰越欠損金を引き継いでないとしても多額の含み損のある資産を適格合併により簿価で引き継いで合併後に売却することで損失を作り出すことができるので一定の場合には売却損の損金算入が制限されます。

 

<損失が制限される要件>(共同事業以外の適格合併の前提)
・5年前(または設立日との遅い日)から継続して支配関係がない
・支配関係発生から5年以内または組織再編から3年以内を経過しない時期の譲渡
・みなし共同事業要件(前回参照)を充足していない
・支配関係発生時の時価純資産価額≦簿価純資産価額

 売るまでの時間が短いなど、売却損目的の合併でないかどうかを判定しています。
なお合併で引き継いだ資産だけでなく、存続法人が元々持っていた資産も制限の対象です。

 

<除外資産>
・土地(土地の上に存する権利を含む)以外の棚卸資産
・売買目的有価証券
・組織再編時の簿価1000万円未満の資産
・支配関係発生時に含み益のある資産 等

 

2.存続法人の欠損金の利用制限

<概要>
 合併する際にあえて赤字の子会社を存続させる逆さ合併などをした場合には、前回の欠損金の引継ぎ制限を回避できてしまうので、存続法人が元々持っている欠損金も一定の場合には利用が制限されます。

 

<利用が制限される場合>(共同事業以外の適格合併の前提)
・5年前(または設立日との遅い日)から継続して支配関係がない
・みなし共同事業要件(前回参照)を充足していない

 上記に該当すると、支配関係発生後の欠損金は使えますが、それ以前の欠損金は使うことができず消滅します。

 

 1.2とも租税回避の意図がなくても結果として該当してしまうケースがあるので注意が必要です。