新聞などで税金申告漏れの報道を読むと、会社側のコメントはい つも「見解の相違があった」です。
税金なんて法律の通りに計算するだけなのに、なぜ見解が「相違」 するのでしょうか。
それは、実際の条文を見ると分かります。
「交際費等とは接待、供応、慰安、贈答、その他これらに類する行 為のための支出」 「法人税の負担を不当に減少させる結果となるもの」 「役員に対する報酬の額のうち不相当に高額な部分の金額」
一体、何が「類する行為」なのか、何が「不当」で「不相当」なの か、さっぱり分かりませんよね。
「交際費等とは接待、供応、慰安、贈答、その他これらに類する行
一体、何が「類する行為」なのか、何が「不当」で「不相当」なの
役員報酬というのは、あんまり高すぎると費用(損金)として認 めてもらえません。そのことを定めているのが、法人税法第34条 「役員に対する報酬の額のうち不相当に高額な部分」の規定です。 いくらまでならOKなのかはっきりさせて欲しいところですが、な ぜ金額を明記しないのでしょうか。
まず一つ、役員報酬というのは株主総会で決めるものだから。株主 さえ了承すれば、役員報酬は自由に決めることが出来るのが原則で す。 いわば自治の精神です。なのに税法で「○○円以上はダメ」と決め てしまうと、税法が役員報酬を決めることになりかねません。 会社の自治を侵害してしまいます。
もう一つ、役員報酬を「1,000万円以上はダメ」などと決めて しまうと、「なら999万円まではOKだな」と考える人が出てく るから。賢い税理士なら、条文を逆手にとって何か上手い節税策を 考え出すことでしょう。 そんなこんなで金額を明記するのは難しいのです。
税法には「租税法律主義」という概念があります。法律の根拠が無 ければ租税を賦課されたり徴収されることはない、というものです 。
税法には「租税法律主義」という概念があります。法律の根拠が無
ただし、これは理想であって実際は難しい。そもそも人の営みの全 てを事前に予想して、予め税金の網を掛けておくなんてのは無理で しょう。 となると、税務署としては課税漏れを最小限に抑えるために、わざ と曖昧な部分を残さざるを得ません。 そんな訳で「不当な」とか「不相当な」という曖昧な条文が作られ るのです。見解が「相違」するのも無理はありませんね。
また「見解の相違」という言葉を使う会社側にも自社の過失は認め たくないという意思表示の側面もあると思われます。
特に公開会社の場合、会社法423条により取締役が損害賠償責任 を追及される恐れもあることから「税法等の適用ないし事実認識等 について過失はなかった、見解の相違である。」というわけです。 修正申告に応じると「過失の存在」を想起させかねないし、不服申 立及び訴訟の機会を失うため、あえて修正申告はせず更正処分を受 けるのもこの側面があるからと考えられます。