贈与税減税~相続時精算課税の拡大~

posted by 2015.10.27

 昨日の続きで平成27年からの贈与税減税の2つ目として”相続時精算課税の拡大”を取り上げます。
”相続時精算課税”とは2500万円を限度として相続を前倒しで行なう制度です。
非課税枠である毎年の基礎控除110万円を約23年分先に使うようなもので一気に贈与することができます。
いざ相続があった場合には贈与したものを足し戻して改めて相続税を計算するため”相続時精算課税”と呼ばれています。

改正されたのは対象者の拡大です。

あげる人:65歳以上の父母60歳以上の父母又は祖父母

もらう人:20歳以上の子 ⇒20歳以上の子又は孫

推定相続人ではない孫に贈与できるようになったのが大きな変更点ですが、相続の際には税額が2割増しになるのでそれでも効果があるのかどうか贈与前の検証は必要です。

 

他にも次のような注意点があります。

・暦年贈与(毎年の110万円非課税)が使えなくなる

暦年贈与は時間はかかりますが相続前3年以内のものを除けば相続の際足し戻す必要がなく課税が完結するメリットがあります。

また保険会社や建築会社などから精算課税を前提とした節税策の提案を受けることがあります。
「こんなに大きな財産が少ない税負担で動かせます」という説明は魅力的ですが暦年贈与ができなくなるデメリットを考慮してトータルで考える必要があります。

 

・小規模宅地の評価減や物納が使えない

相続時に足し戻すので相続税の計算上は乗っかってきますが小規模宅地の特例や物納など通常の相続で受けられる特例が使えません

 

・不動産の場合コストが高い

贈与と相続の比較では贈与の方が不動産取得税がかかる、登録免許税が5倍になる、など移転コストが高くつきます

 

・必ず申告

2500万円まで非課税なら手続きはいらない、と思われがちですが贈与税の申告は必要です。

 

 もちろん確実に生前に移転できる、収益物件を贈与すれば収入も移転できる、値上がりする財産を贈与すれば値上がり益も移転できる、といったメリットもあります。

”2500万円まで無税”という瞬間的なメリットだけに目を奪われることなくデメリットや”時間”も考慮して選択を検討していただきたいと思います。