先祖代々引き継いでいる土地を相続税納税のために売却することがあります。
譲渡所得は「収入-取得費-経費」で計算しますが、相続で引き継いだ不動産は取得費が分からないケースがほとんど。
そういう場合は「売却額の5%」を取得費にする(概算取得費)というのが昨日の内容でした。
ただしこの計算だと95%が売却益になり、払う所得税も多くなります。 相続税を払うために売却しているのに、さらに譲渡所得税で目減りしてしまうと、相続税も払えません。
そこで相続税納税のために不動産を売る場合は、譲渡所得税を安くする特例があります。
「相続税の取得費加算」というものです。 相続で不動産を引き継いだ際に、相続税を払っていれば取得のためのコストと考えて取得費の一部としてカウントします。
(例) 相続財産が土地だけで5億円、相続税を1.5億円納税。 相続後に6億円で売却
特例なし:(6億-6億×5%)×20%=1.14億円
特例あり:(6億-6億×5%-1.5億)×20%=8400万円
3000万円安くなりました。
この特例には要件がいくつかあります。
① 売った人が相続税を払っていること。
払った相続税がなければ引くものもありません。
② 死亡後3年10ヶ月以内の売却であること。
相続から時期が離れすぎると相続税を支払うための売却ではないからです。
③ 引ける相続税は全額ではなく売った財産の割合まで。
上記の例では簡略化のため、土地1つしかない前提で全額引いてますが、他の財産があれば払った相続税を売った財産の割合で按分します。この時に土地は優遇されており、売った土地だけではなく売っていない土地も含めて土地の合計で計算します。
これは土地は処分しにくいし、相続税の負担も大きいのが理由だと思われますが、優遇し過ぎではないかという意見もあり、今後売った分だけに限定される可能性があります。
長々と説明しましたが、ポイントは「相続で引き継いだ土地を売る場合、どうせなら3年10ヶ月以内が有利」ということです。