以前紹介した際には、「悪い戦略の事例も多いので、他人の不幸が大好きな方にお勧め」と言いつつ、良い戦略の事例しか載せていませんでした。ところが、世の中には他人の不幸が大好きな方が多いようで、「悪い戦略の事例はないのか」との催促が次々と舞い込んできました。私も他人の不幸は嫌いじゃないので、今回は「悪い戦略」特集です。
「良い戦略、悪い戦略」 リチャード・P・ルメルト 日本経済新聞社
まずは世界中に迷惑をかけたリーマン・ブラザーズ。
債券取引が得意なリーマンは不動産担保証券ブームで大いに儲けました。しかし、アメリカの住宅販売は2005年には頭打ちとなり、住宅価格の上昇に歯止めがかかります。FRBが金利を引き上げたこともあり、ローンの延滞や差し押さえなどが増えてきました。
このとき、リーマンの社長が打ち出した戦略は「シェアの拡大を目指す」というもの。つまり、他社が手を引くようなリスクの高い案件にも手を出すということ。
リーマンは自己資本比率が3%しかなく、しかも借入金のほとんどは短期であることを考えると、むしろリスクの低減を図るべきでした。
野望を掲げるのは勝手ですが、それは戦略とは言いません。2008年、リーマンは158年の歴史に幕を閉じ、世界中を大混乱に陥れたのです。
(つづく)