相続対策と言うと相続税対策をイメージされるかも知れませんが、遺産分割対策、納税資金対策も重要です。あえて優先順位をつけるとすると ①遺産分割対策 ②納税資金対策 ③相続税対策 となります。
1.遺産分割対策
「うちは仲いいから大丈夫。財産もないし」と思われている方が多いのでないでしょうか。今は仲が良くても、将来どうなるかは分かりませんし、“争族”になるのは財産の多い方だけとは限りません。むしろ財産が少ない方が分割が難しくもめることが多いようです。そこで遺された家族に確実に気持ちを伝え、トラブルを回避する有効な方法として遺言があります。遺言は作ってしまうと安心される方もおられますが、財産の中身も変わりますし、思いも変わります。定期的にメンテナンスすることをお薦めします。遺言を作る際には遺留分(相続人が最低限要求できる取り分)にも注意する必要があります。
2.納税資金対策
相続税は亡くなってから10ヶ月以内に現金で一括納付するのが原則です。しかく相続財産に占める現金預金の割合は2割程度であり、納税資金対策をしておかないと、慌てて不動産を売却したり、最悪は相続破産ということにもなりかねません。まずは生前に相続税の試算を行ない、だいたいの納税額を把握することが納税資金対策の第一歩です。その上で保険の活用、不動産の有効活用、延納物納の検討などを進めておく必要があります。また農地や山林、同族会社の株式には納税猶予という制度があります。納税猶予とは免除とは違い、事業を継続する限りは相続税を払わなくていいという制度です。納税猶予には様々な要件がありますので事前の準備が不可欠です。
3.相続税対策
相続税対策は、今どの段階にあるかによってできることが変わってきます。「相続発生前」、「相続発生後」、「申告書提出後」に分けて見ていきます。
相続発生前 |
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生前贈与の実行 |
早めに取り組めば少しずつでも大きな効果 |
土地の活用 |
借金による安易な相続対策は逆効果 |
生命保険の見直し |
非課税制度の活用と納税資金準備 |
養子縁組の活用 |
手続き簡単で効果高いがデメリットにも注意 |
相続発生後 |
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遺産分割の工夫 |
分割がまとまらないと税額軽減も受けられない |
土地評価の工夫 |
現場を確認し、個別事情を考慮して評価 |
申告書提出後 |
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更正の請求と修正申告 |
遺産分割の変更で税額が変動することも |
税務調査の準備 |
備えあれば憂いなし |
リンク
<相続発生前>
相続基礎講座 「贈与税の計算」 「相続税のかからない財産」
<相続発生後>
相続基礎講座 「相続税の2割加算と税額控除」