消費税の仕入税額控除 ⑤ 書類保存の判例

posted by 2018.08.7

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 仕入税額控除の5回目は税務調査や裁判での事例について見ていきます。

 論点になるのは「書類が保存されているか」「帳簿にちゃんと記載されているか」ですが、まずは書類の保存から見ていきます。

 

1.調査時に提示しなかった事例

<概要>
 税務調査の際に提示しなかった請求書等を訴訟などの際に事後的に提出した場合に控除が認められるか。

<結論>
 保存とは物理的に残すだけでなく調査時に提示したものしか控除できない。

<備考>
 厳密には「保存」=「提示」ではないものの、後出しは当初はなかったと推認される可能性が高い。調査に際しては書類が提示できる状態なのか事前に確認しておく必要があります。

 

2.書類を処分した事例

<概要>
 廃業状態であることを社内で説明するための書類を廃棄したことは保存できなかったやむを得ない事情に該当するか。

<結論>
 帳簿書類等を提示できなかったことは本人の責任であり、やむを得ない事情に該当しない。

<備考>
  「やむを得ない事情」はそもそも請求書等を受け取れない取引や災害で消失した場合などよほどの場合に限られます。

 

3.仕入先を明らかにしない事例

<概要>
  商取引の慣習で取引の経路が確認できず、仕入先も請求書を発行しないため、帳簿に仕入先名だけ記載している場合に控除できるか。

<結論>
 仕入先の詳細を確認せずに漫然と氏名を帳簿に記載するだけでは真実であることが確認できないので控除できない。

<備考>
 4要件の一部がたまに漏れてるぐらいなら調査時に情報を補完すれば事足ります。その情報を元に相手方で課税売上に計上されているかどうかが推認できるためです。

 

 お客様から時々こんな質問を受けます。

「領収書を失くしてしまったんですが経費にできますか?」

「書類もないし、相手に迷惑がかかるから名前は出したくない」

 

 領収書等がないと本来は経費になりませんが、状況から考えて内容にまちがいがなければ「たまたまのミス」として大目に見てくれます。
ただし、それがメインの仕入れであって影響が大きい場合や相手先との関係で詳細を説明できず真実性を確保できない場合は仕入税額控除は難しいでしょう。
なお相手先を明示できない場合は法人税上も経費にするのが難しくなります。

 

 次回は帳簿の記載事項に関する判例等を見ていきます。