昨日の続きで今年4月以降の新たな賃上げ税制について確認します。
2.令和6年度改正
① 対象
<時期>
・令和6年4月1日~令和9年3月31日開始(令和7年3月決算~令和10年2月決算)
・個人は令和7~9年
<対象企業>
・青色申告
・大企業、中小企業を問わず個人も含む
・新たに中堅企業という区分を創設
<法人区分>
・大企業 :資本金1億円超、従業員2000人超
・中堅企業:資本金1億円超、従業員2000人以下(新設)
・中小企業:資本金1億円以下(大企業の子会社等を除く)
なお、要件を満たせば大企業、中堅企業向けの制度を中小企業が使うこともできます。
② 控除率
<原則>
大企業と中堅企業では一層の賃上げを促すためにハードルが上がっています。
賃上げ率の判定は大企業と中堅企業は継続雇用者の給与で行い、中小企業は全従業員の給与で行います。
税額控除額は大、中堅、中小とも全体の増加額に次の率を掛けて計算します。
≪大企業≫
・3%賃上げ:10%(改正前15%)
・4%賃上げ:15%(改正前25%)
・5%賃上げ:20%(新設)
・7%賃上げ:25%(新設)
≪中堅企業≫
・3%賃上げ:10%(改正前5%)
・4%賃上げ:25%(変更なし)
≪中小企業≫
・1.5%賃上げ:15%(変更なし)
・2.5%賃上げ:30%(変更なし)
<教育訓練費の上乗せ>
≪大企業・中堅企業≫ +5%
・教育訓練費が前年比10%増加(改正前20%)
かつ
・教育訓練費が給与等支給額の0.05%以上(改正で要件追加)
≪中小企業≫ +10%
・教育訓練費が前年比10%増加(変更なし)
<子育て支援・女性活躍推進の上乗せ>+5%
≪厚生労働大臣の認定≫
・プラチナくるみん認定 :大、中堅、中小
・プラチナえるぼし認定 :大、中堅、中小
・えるぼし認定(3段階目以上):中堅
・えるぼし認定(2段階目以上):中小
・くるみん認定 :中小
③ 中小企業の繰越し制度
従来の制度では給料を増やしても赤字であれば恩恵がなかったため、5年の繰越し制度が新設されます。
なお、繰り越した年度でも前年比で少しでも給与等支給額が増えていることが要件となります。
④ マルチステークホルダー要件
大企業や中堅企業では賃上げや教育訓練などの方針を明確にして、外部に宣言する必要があります。
<改正前>
・資本金10億円以上かつ常時使用従業員が1000人以上
<改正後>
・資本金10億円未満で常時使用従業員が2000人超の法人を追加
控除率に関しては要件を細かく区分して賃上げを促す仕組みに改正されています。
中小企業については5年の繰越し制度ができたので、使い切れない分が減りそうです。