グループ通算制度 ② 連結納税との違い

posted by 2022.05.19

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 連結納税制度に代わる制度であるグループ通算制度はどんな制度なのでしょうか。

 

1.創設の経緯

 前身である連結納税制度グループ全体で損益通算ができる制度ですが、全体計算項目も多く、グループ内の1社で修正が発生した場合に都度全体の修正申告が必要となっていました。
その事務負担の大きさが導入のネックとなっていたことから連結納税制度を一旦廃止して、連結納税制度のいいとこ取りをしつつ個別に申告する制度としてグループ通算制度が創設されました。

 

2.適用法人

 連結納税制度と同様、「内国法人及びその内国法人との間にその内国法人による完全支配関係がある他の内国法人」が対象です。
平たくいうと親会社と親会社に直接間接に100%を保有される子会社や孫会社で、外国法人は除きます。

 適用は任意ですが連結納税制度を適用していた企業は自動的にグループ通算制度へ移行します。移行を希望しない場合は事前に届け出る必要があります。
新たに適用する場合は、受けようとする事業年度開始の日の3か月前の日までに親法人の所轄税務署に承認申請書を提出する必要があります。

 

3.メリットとデメリット(概ね連結納税制度と共通)

<メリット>
・グループ内の黒字企業と赤字企業を損益通算することで法人税を軽減できます。

・研究開発税制や外国税額控除をグループ全体で計算することで使い切ることができます。

<デメリット>
・個別なら受けることができた中小企業(資本金1億円以下)の税制優遇が受けられなくなります。例:税率、貸倒引当金、交際費など。

・全体計算があるため、個別申告に比べると親会社子会社とも事務負担は増えます。

・グループ内で税の滞納があった場合、連帯納付責任が発生します。

 

4.連結納税制度との違い

<メリット>
・連結納税制度に比べると全体計算項目は減ること(受取配当等や寄附金など)と個別申告であることにより事務負担は減るので従来より導入のハードルは下がります。

・申告後の修正や更正はグループ内の他社に影響しないため、税務調査後の手続きが軽減されます。

<デメリット>
・導入前の親会社の繰越欠損金が利用できなくなります(連結納税制度では子会社の繰越欠損金のみ持ち込み制限あり)。

・グループ内に1社でも資本金1億円超の企業があれば中小の税制優遇が失われます(連結納税制度では親会社の資本金で判定)。

・グループ内の全ての企業に電子申告が強制されます(連結納税制度では中小なら紙の申告も可能)。

 

 グループ納税制度に代わることで連結納税制度と比べて事務負担は減るものの税制的にはやや厳しくなる印象です。
従来から連結納税制度を導入している場合にはメリットの方が大きそうですが、新たにグループ通算制度を導入する場合には個別申告との違いをシミュレーションした上で導入する必要がありそうです。